アイドルとわたし
「邪道…」
思わずそう呟いたあたしの手を
智哉くんはしっかり握った。
そして彼はこう続けたんだ。
「真央さんに出会うまでは、そう思っていたんです。
でも、私もアイドルである前に1人の人間です。
彼女を思うと嬉しくなったり、苦しくなったり。段々真央さんを思う時間が自分の中に増えていって。
私から告白をしました」
智哉くん、あたし今最高に幸せだよ。
この言葉が聞けただけで、なんだかプロポーズされたみたいな気持ちになる。
「お母さん、あたしもね、正直不安でいっぱいなの。
智哉くんは国民的アイドルであたしは一般人で、住む世界が違うって。
智哉くんのいる世界にはあたしよりも美人で可愛い人が沢山いる。なのになんであたしなのかなって。
でもね、智哉くんはいつも伝えてくれる。あたしの顔だけじゃなくて中身も見てくれる。
それに、お母さんも知っている通り、ずっとあたしが求めて来た人に出会えた。
運命なの。智哉くんはあたしの運命の人なの。
あたしね、お母さんには反対されるつもりで紹介してる。
別れろって言われても別れない。
ただ、紹介をしてお母さんに嘘をつかずに堂々と付き合いたくて今日忙しい中来てもらったの」
この言葉を言うだけでも震える。
震えた手を智哉くんがまたギュッと握り直してくれるから。あたしの気持ちが少し楽になる。