osean's love~改訂版~
烏賊~ika~
「じゃあ、これが今日の自習プリントだ。裏もしっかり見とけよ。」
今いるのは職員室。
鰯のところに自習プリントを取りに来ているのだ。
プリントの裏に書いてあるのは変える時間と集合場所。
私が毎日これをもらうのをいいことに、彼はこうやって連絡を押し付けてくる。
こっちの都合は関係なしで。
本当に迷惑。
『だったら、ばらばらに変えればいいじゃん。そのほうが誤解もされないし。』
って思われるけど、家の鍵が1個しかないんだ、あのマンション。
前に「合鍵作って」って頼んだんだけど、「そうしたら一緒に帰れなくなるだろ。」と言われて作ってもらえなかったんだ。
「はあ……今日は7時に体育館倉庫ですか。わかりました、さようなら。」
「うん、よろしく~!」
鰯が笑顔で、後ろで手を振っているが、無視して教室に戻った。
「おーい、吉川!ちょっと手伝ってくれないか?」
2階にある教室の窓から下を覗くと、グラウンドで私を呼んでいる熊岸先生が見えた。
もっと周りに生徒いるじゃん。
だけど心優しい私は断れず、下に降りて熊岸先生に駆け寄った。
「なんですか?熊岸先生。」
「ああ、このメジャーを一緒に片付けてくれ。今日、1年の走り幅跳びで使ったんだよ。」
「はあ、わかりました。」
私は5つあるうちの二つのメジャーを両手に持った。
意外と重い。
そして、熊岸先生の横を歩いた。
なんだか本当に熊みたい。
まあ、そういう私は豚だけど。
「なあ、吉川。お前来週誕生日じゃん?何がほしい?」
「そんな!先生から物をもらうなんてできません!いらないです。」
「わかった。婚約指輪だな。」
「すみません。受け取るので、違うものにしてください。」
「ちぇ。……吉川に合うものか。本気で吉川、何ほしい?」
「ほしい物とかないんですよ、本当に。ああ、じゃあダンベルで。私、ダイエットしようと思って。」
「……。」
熊岸は何も言わず、正面から私の顔を覗き込んできた。