osean's love~改訂版~
鱚~kisu~
ガタッ
ドアが音を立てて揺れた。
風のせいではなく、何かがぶつかったような音。
私は、浅田先生の体を反射的につきとばしてしまった。
「あ、すみません……。」
浅田先生は、私の声が聞こえてないらしく、音を立てたドアのほうに近づいて行った。
「そこに誰かいるのか……鰯。」
いわし?
何のことだろう。
ドアのほうをぼけーっと眺めていると、見慣れたあいつが出てきた。
鰯。
「先生、今の見たの……?」
しかし鰯は答えない。
なんだろう、この沈黙。
すごく怖い。
浅田先生のせいでこうなったのに、浅田先生は涼しい顔で眼鏡を拭いている。
ふざけんな。
うつむいていると、突然誰かに腕をつかまれた。
ものすごく強い力で。
「え?」
驚いて上を見上げると、そこには怒った鰯の顔があった。
「立て。」
はい?
予想していなかった言葉に驚いて、思わず鰯の顔をじろじろ見てしまった。
その瞬間、教室の床の上をずるずる引きずられた。
摩擦のせいでお尻が痛い。
私は自分の足で鰯についていくことにした。
「さっきのあれ、なんだったの?」
鰯に壁ドンで攻められる。
あれとは、おそらくキスのことだろう。
しかしあれは、言っていいものか迷うなあ。
鰯に言って、浅田先生が辞めることになったら申し訳ないし……って、わたしは被害者なんだけどね。
「うん。ジコダヨ。アレハジコダヨ。」
ソウダ。アレハジコナンダ。
「嘘つけ。」
あ、ばれた。