私的日常記録
ネームバリューも何もない私の名前でよければ、と名前を借したが、最早そこは問題じゃない。
[ 以上で100m走は終わりだぁ!どのクラスもしょっ鼻から飛ばしてきたようです!片時も目が話せない、次の競技はぁ~?借り物競争だぁ!]
カナやんの名前を知るため、というかカナやんのためだけに今も健気に頑張っているワサビ君を思うと泣けてくるんだ。
誰か彼に慈悲を。
借り物競争あるあるのお題「好きな人」のカードを引いた坊主の男の子が校庭の中心で愛を叫んでいる頃、サァヤが帰って来た。
清々しい笑顔だな。一位おめでとう。
私の競技は午後なので午前中は暇だ。
サァヤのように運動が得意な訳でもないので、応援を頑張ろうと思っていたんだが、クラスの可愛い女の子達がキャッキャしていたので十分かな、と。
ええ。日陰で体力温存してますがなにか?
「レミちゃんレミちゃん!」
[ おぉっと⁉5組井上フラれてしまった~だがこの競技は『好きな人』を借りてゴールしなければならない!フラれても手を繋いでゴールしてください!]
冥土の土産ってやつか……借り物競争恐いわ~
目に涙をためながら必死に、手を繋いでください!と土下座決め込む5組井上を尻目に借り物競争には絶対出ないと心に決める。
これは至ってサボりではない。自分の出場競技に向けてコンディションを整えているだけだ。
「レミちゃんレミちゃんレミちゃん!」
暑いなか応援だのなんだのでずっと日光に晒されてたら灰になるわ。
正午に近づくにつれ高く上がり、地面に伸びる影を短くする太陽を恨めしげに睨む。
「レミちゃんレミちゃんレミちゃんレミちゃん!」
「壁は黙ってろ」
「まだそれ続いてたんですね。」