Fruit Jewel
家に着き、制服を脱ぎ捨てながら、あたしは唯の言葉を思い出していた。
苺にも負けたくないっていうくらい好きな人を見付けなきゃ、林檎は変わらないよ…か。
フゥー、と大きく息を吐き、ルームウェアに着替え、カーテンを開けて新鮮な空気を部屋に取り込んだ。
窓を開け放したまま、ベランダに出る。
おもむろにあたしはベランダに足をかけて飛び、隣の家のベランダに着地した。
ガラス戸に手をかけると施錠はされていなくて、躊躇することなく部屋へ入る。
家主は不在。
静かな室内を物色する。
決して空き巣趣味があるとかじゃない。
ここは言わば、第二の自室。
見たいDVDや漫画がどこにあるかなんて、自分の部屋と同じくらい知り尽くしてる。
でも、机の引き出しやパソコンには触れない。
一応プライバシーは守ってる。
ベッドの下に積まれた漫画の新刊を手にとりベッドに寝転がる。
中盤まで読んだ頃、ドアがガチャリと開いた。
「お帰り〜。遅かったね」
あたしは視線を漫画に向けたまま帰宅した家主に声をかけた。
「テメー、オレもまだそれ読んでねえっつーの」
家主――青樹はあたしから漫画を取り上げる。
「ああっ! 今いいとこなのにー! 返せ!」
手を伸ばし取り返そうとしたけど、青樹はひょいっとかわしてあたしの手は宙を切った。
「バーカ」
ニヤリ。
不敵な笑みを浮かべる憎たらしい青樹。
ほんっとムカつく!
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