Fruit Jewel
青樹のお腹に本気のパンチを食らわして、あたしはベランダへと出た。
「青樹のど変態!」
「テメ…待てコノヤロッ」
お腹を抑える青樹を残し、あたしはセーフティーゾーン(あたしの部屋)へと逃げ込んだ。
シャッとカーテンを閉じ、ベッドへ伏せる。
ほんっと青樹ってばどこ見てるんだか!
ムッと口を尖らせながらも、やり過ぎたことを少し後悔する。
やられたままで青樹が終わるはずがない。
学校のみんなは青樹の端整な顔立ちで、優しい紳士的な王子様みたいに思ってる。
だけどあたしは知ってる。
アイツの超サディスティックな性格を!!!
昔っからあたしをイジメるのが青樹の楽しみなんだ。
………。
明日が怖いかもι
まっ、まぁ学校では青樹も何もしてこないだろうな。
外面だけはいいヤツだし、登下校を青樹と重ならないように気をつけて、当分部屋に行かないようにすればなんとか…ね。
「よしっ! それで行こう!」
あたしは完璧な計画を思い付き、ぴょんとベッドの上に跳ね起きて、気合いを入れて右腕を上げた。
「どこか行くの?」
「ドワッ!! ママ! 帰ってたの? てかノックくらいしてよ」
「したわよ、何度も」
「それよりママ、なーにその格好? パートに行ってたわりにオシャレしてない?」
年の割に若く見えるママは、他のママさんに比べたら流行に敏感な方で、あたしと洋服を共有してたりするけど、パートに行く時はラフな格好してるのに今日は普段より気合いが入ってる。
「もー、林檎ってば今日はママ同窓会があるからって話したじゃない」
そう言われて、ここ数週間のママとの会話を思い出す。
そういえば、先々週くらいにそんな事話してたかも。
すっかり忘れていた。
どうりでオシャレしているわけだ。
.