Fruit Jewel
あたしを見下ろす青樹の瞳は意地悪に光ってる。
一歩あたしに歩み寄り、その歩みに合わせてあたしは一歩後ずさる。
それを2、3度繰り返すとあたしの歩みは壁に遮られた。
「もう行き止まりみたいだけど?」
そう言って青樹は右手をあたしの頬に添えた。
スッと青樹の頬を撫でると青樹はあたしの顎に手をやると強引にあたしの顔を上げる。
「ちょっ…なに?」
間近にある青樹の顔。
見慣れてるけど、この距離には慣れてなくて焦って声を出す。
それでも涼しい表情で青樹は意地悪な視線を投げかけている。
「なにって、お仕置きに決まってるじゃん」
口角を上げて妖しい笑みをこぼす。
その青樹の表情はなんだか色っぽくて、眼を奪われる。
それがあたしには耐えられなくて、ギュッと眼を固く閉じた。
青樹の手があたしの顎から離れ、あたしの唇を撫でた。
――ビクリ。
跳ね上がったのは心と身体。
どちらも青樹の行動に反応するのがやっぱり許せなくて耐えられない。
青樹はただの幼なじみのはずなのに…。
こんな…こんなのっ……
…ん?
んんっ!?
あたしはこれから起こり得る状況を想像したけど、一向にそれは起こらない。
うっすら眼を開くと、それを合図にしたように青樹の手があたしの唇をを思い切り捻り上げた。
「ん゛ん゛〜〜〜!」」
唇を閉じられていて、痛みの悲鳴が上がらない。
「ばーか! オメー、何されると思ったんだよ?」
青樹はいつもの軽口を叩くと手を離し、あたしはやっと解放された。
「なっ、なんにも考えてないわよ!」
ジンジンと痛む口を押さえて青樹を睨むけど、青樹はさらりとそれさえかわし、リビングへと消えて行った。
「青樹のどアホーーー!」
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