Fruit Jewel






「ん…。いい風」


少し開いた窓から入り込む風が柔らかくあたしを包む。


どこからか伸びる影も、温まった室内に涼をもたらして心地いい。


(あれ? 影なんて作る物あったっけ?)


違和感を感じて恐る恐る上を向く。


「ドワッ!!?」


ニッコリと、それはそれは綺麗な笑顔を向ける美並ちゃん。


あたしはそれでやっと自分が置かれている状況を思い出した。


「よーく眠っていたようだなー。ん? 気持ちよかったか?」


「えーっと…。イエ…いや…あの、……ハイ」


美並ちゃんの額にぴくぴく浮かぶ青筋を見たら、背筋も凍るような気分になって、ここはごまかすことなんてしちゃいけないと、あたしは目を泳がせて消え入る声で答えた。


「ほぉ〜、あたしの授業で気持ちよく居眠りたぁ、いい度胸してんなーゴラァ!」


美しかった笑顔はどこ吹く風。


元ヤン・女教師の美並ちゃんの怒声が飛ぶ。


(ヒィーーー!)


あたしは声にならない声を上げ、瞬きも出来ずに美並ちゃんの第2派を受けた。


「あたしの授業を妨害したヤツはどんな運命が待ってるか知ってのことかー!? あ? どーなんだ?」


ドスがききまくった声は腹にも響き、全身を震わせた。


その後、あたしは必死で謝り、美並ちゃんからのお咎め(ヤキ入れ)は無しで済んだ。


チャイムがタイミング良く鳴ったのも幸いした。


「おっと、もうこんな時間か。昼メシだ、昼メシ! 腹が減るとイライラしてダメだな。五十嵐〜、もう寝るんじゃねーぞー」


そう言って美並ちゃんは、起立、礼もそこそこに教室を出て行った。





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