Fruit Jewel
キュッ、キュッ…パーン!
体育館に響く靴の音とボールを弾く音。
木曜の午後一の授業は体育で、我が白華学園二年生の初めは伝統的にバレーとなっているらしく、あたしたちもその例に従い男女コートを別けてバレーをしている。
授業前半は二人以上の班を作り、レシーブなどの軽い練習をして体を慣らす。
「食後の体育は腹痛くなるわよね」
横腹を押さえ、唯は顔を歪める。
梅ちゃんも苦しそうだ。
「二人共情けないなー。運動不足なんじゃない?」
「林檎が元気過ぎなのよ」
「そう? これくらいどーってことないけど。はーい、いっくよー!」
会話にも入ってこれないくらい辛そうな梅ちゃんへのパスは、会話と同じく返って来ず、受けられることのなかったボールは梅ちゃんを越して後ろへと転がった。
転がるボールは女子のエリアを抜けて、男子のコートへ侵入する。
梅ちゃんがそれをよろよろと追いかけて行く。
ボールに気付いた男子が拾って梅ちゃんに投げた。
「ありがとー、安崎くん!」
前髪を斜めに流した“安崎くん”は梅ちゃんに片手を上げると、また練習へと戻った。
ピーーー!
丁度その時、笛の音が鳴り、授業後半を知らせる。
後半は笛の音を合図に、あらかじめ決められていたチーム毎にコートに別れて試合形式で進めていくのだ。
初めの試合メンバーにあたしと唯は含められていて、同じコートへと入る。
「あー、やっと休憩出来るー! 二人は頑張ってねー!!」
相当しんどかったのか、梅ちゃんはコート脇に倒れるように座った。
「ったく梅め。あたしらも辛いっつーの! …って聞いてる?」
「聞いてる! 聞いてますとも!! 梅ちゃん休めてよかったよねー」
「…聞いてないし。大丈夫? 林檎なんか変じゃない?」
「そんなことないよっ!! ほら唯、始まるよ」
唯の言う通り、たぶんあたし、少し変。
自覚はしてるけど、どうしようもないんだ。
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