Fruit Jewel
ピッピーー!
試合開始の合図を告げる笛で、トリップしかけた思考を現実へと戻す。
ボールが飛んでくると元バレー部だった血が騒ぎ、すぐに集中出来た。
相手チームには願ってもない人物もいる。
ど素人相手にだってあたしは容赦しないわよとばかりに、ゆるーいボールを相手コートへと撃ち込む。
「どりゃー!!」
味方も敵も、美並ちゃんばりの豹変に驚く。
あたしだって鬼じゃない。
相手があの小娘(同い年だけど)じゃなかったらこんな風にはならない。
ボールが放たれた場所から1番近かった子が
「キャッ」
可愛らしい声を上げる。
「苺ちゃん大丈夫!?」
「五十嵐ー! 苺ちゃんに当たったらどーすんだー!」
小娘(何度も言うが同い年)を心配したのは味方チームでも、休憩中の女子でもなく、隣で試合観戦しているはずの男子たち。
「あたしなら平気だから」
男子に向かいにこりと微笑む唇は、憎たらしいくらい形がいい。
白い肌に映えるピンク色のプルンとした唇に、黒目の大きいパッチリおめめ。
小柄な体型は守りたくなる度マックスだ。
そんな女の子に微笑まれた単純な男子はハートを射ぬかれデレッと鼻の下の面積が倍になっている。
「林檎ナイス! 次も頼むわよ」
バカな男子の野次をスルーして唯が声をかけてきた。
ムカムカした気持ちが唯の声で少し晴れる。
力強く頷き、ターゲットをロックオン。
ボールがあたしに飛んでくる度に狙いを定めて苺へと打ち返した。
同じくらい男子の野次が飛んできたけど、コートの中では平気なのと、どこぞのヒロインみたいにアタックを決めまくった。
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