Fruit Jewel
気がつけば圧勝。


チームメイトにあたしの活躍ぶりを褒められ、誇らしげに苺をちらりと見る。


でも、苺は全然悔しそうにしてなくて、それどころか男子に囲まれて


「怖くて逃げてちゃった」


と上目遣い。


「ほんっとあの女目障りだわ」


横を歩く唯が目を吊り上げる。


「なんか試合に勝って勝負に負けた感じ」


唯のように怒る気力も湧かなくて、ため息を吐いた。





梅ちゃんの試合を応援するためにコート脇に座る。


サーブの順番が梅ちゃんにまわってきて「頑張れー」と声をかけたが、それを遥かに上回る大きな悲鳴にあたしの声は掻き消された。


「キャー! 青樹くんかっこい〜〜!」


次の瞬間、ボールが床を打つ音が鳴り、アタックが綺麗に決まったのが見ていなくても分かった。


「安崎 青樹かー。いい男よね」


「えっ!? 唯、ああいうのタイプだったっけ!!?」


「ん? べっつにー。一般論を言っただけよ。なに林檎、気になるの?」


「そっ、そんなんじゃないって! 第一、あたし今センパイ一筋…」


そこまで言って慌てて口を手で塞いだ。


迂闊にこの話題が出せないってことを、気が動転して忘れていた。


辺りを見渡し、誰もあたしたちの会話を聞いてないことを確かめる。


「ねー、たしか安崎って同中だっけ?」


「唯、あたしの何気ない爆弾発言スルーしないでよ」


「どこが爆弾? あんたの一途話は聞き飽きたわよ。一年の頃から数えて何回目よ」


ムーっと唇を尖らせてみても、それすらスルーなSな唯。


「で、返事がまだなんだけど」


人の話題には平気で無視するドSな唯様は、自分が無視されるのはお嫌いらしい。


……出来ればこのままスルーさせて下さいというあたしの密かな願いは天に通じなかったらしい。





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