俺は絶対好きにならない
七夕祭り 前編
「慶介おはよー」
「おはよー」
学校に来ると、サトと下駄箱で会った

「彩羽ちゃんおはよう」
俺の後ろにいた彩羽にサトが挨拶する

「おはよう」

彩羽は今日も塞いでいる

教室へ向かっているとき前にルイがいて、ルイが振り向いたときに明らかに俺たちが視界入いったはずなのに、声をかけることなく、自分の教室に入っていった

「じゃあね」
彩羽とも別れる

ルイが明らかにおかしい

教室に入ると、けんぞーが駆け寄ってくる
「サト、サト!」
「けんぞー、おはよう」
「今日って、英語の小テストあったよな」
「うん、2時間目だっけ」
「今日のテスト範囲どこー?」
「P30~」

けんぞーの「英語の小テスト」という言葉に驚く

「えっ、今日あったっけ??」
「うん」
「慶介忘れてた?おれと一緒~」
「慶介が忘れるの珍しいね」

単語帳、単語帳と鞄を探してもない

「慶介、単語帳もねーの??」
「忘れた」
「おれは持ってきた、ほれっ!」

けんぞーはオレに単語帳を高々と見せつける
腹立つ

「2時間目だし、隣のクラスで借りてきたら?」
「彩羽ちゃんにですか~」
けんぞーがちゃかす

「借りてくる」
そういって俺は隣のクラスへ向かった

隣のクラスの扉の外から彩羽を呼ぶ
「彩羽」
読書していた彩羽がこっちに向かってやってくる

いつもなら「けーちゃん?」と嬉しそうにやってくるが今日はそうは来ない、ルイもいつもならやってきそうだが、今日は寝ているようだった
「単語帳、借してくれないか?」
「けーちゃん忘れたんだ~
でもごめん、今日持ってきてない」

言葉はちゃかす風でも、目が沈んでいる
彩羽は彩羽なりにいつもの彩羽をしようとしているように見えた

「そっか、ありがとう」
「ルイならもってるかな」

寝ているところ申し訳ないがルイを呼ぶ
「ルイ!」

すると俺の後ろからけんぞーが出てきた
「慶介借りれたかー?」
「今」
「あっ!ルイだ~」

ルイの名前は転校生に上乗せして帰国子女ということもあり、名前は学年中に知れていた

「ルイ、おはよう」
「うん、おはよう」

なぜかルイが暗い

「単語帳、持ってたら借してくれないか?」
「うん、ちょっと待ってて」

ルイも俺が単語帳を忘れたことに関してなにもつっこまない
たたたっと自分の席に戻って単語帳を取ってくる

「はい」
「ありがとう」

そういってルイは席に戻ってしまった
彩羽は既に席に戻ってしまっているから、俺は教室にそのまま戻る

「なんか、ルイ暗くねー?」
「そうだな」
「いつもあんな感じ?おれ話したことねーからわかんないけど」
「いつもはもっと違う、眠いだけか、何かあったかな」

教室に戻るとサトが俺に聞く
「借りれた?」
「あぁ」

ルイから借りた単語帳をひらひらと見せる

「彩羽ちゃん?」
「いや、ルイが持ってて借りた」
「よかったね」

突然、けんぞーがサトと俺との会話に割り込みをした
「ルイがお葬式状態だったー」
「何それ?暗かったって意味?」
「そう、なんか沈んでた?彩羽ちゃんも」
「今日のルイ、なんか変だったな、、、 」
「万年、変な慶介にルイ君も言われたくないよ」
「なにそれ」
「変な介入するつもりないけど、ルイ君の立場と気持ち考えたことある?」

「急になんだよ」
「別に」

俺はいつもと違うサトの言動に驚くばかりだった

「そういえば、昨日の体育、サト、ルイとペアだったんだよなー」

けんぞーも空気に違和感を覚えたのか覚えなかったのか、急に話を変える

「いいなー、ルイと話せるチャンスができて
俺、絶対認知さ」
「なにそれ?
サト、ルイに何か言った?」
「それは俺じゃなくてルイ君に聞くところじゃないの?」
「昨日と今日でルイが変わったなら、サトが何か関わってるって疑ってもおかしくないと思うんだけど」

俺のキレ方にさすがにけんぞーは気づいたのか、おたおたする

だが、サトはいつも通り落ち着いて言葉を発する

「こんなこと言うの俺らしくないと思うんだけどね
慶介はルイが2人のそばにいて何も感じないと思ってるの?
ルイが深く詮索してこないからってどこかで安心してるんじゃないか?」
「それは、、、 」

考えていたことをズバリと言われて、何も言えなくなる

「ルイ君のことちゃんと考えたことある?」

それが決め手だった

今まで、自分たちのことばかりで、ルイのことを考えているつもりで全然考えてこなかったのだと今更ながらに思い知る
俺はどこかでルイは都合のいい奴と思い込んでたんじゃないかと考えざるを得ない

「ルイ君は2人のことちゃんと考えてくれてるよ
だったら慶介もすることあるんじゃない?」

サトは曖昧なことは言わない
だから、その言葉ひとつひとつが痛くて痛くて、気づけていない俺の愚かさに気づかせてくれる

七夕祭りが明後日に控えている中で、いつもの俺は自分のことと一樹と彩羽しか考えてなかったが、ここで初めて、本気でルイの気持ちを考えてみた


そして七夕祭り当日がやってきた
彩羽は学校を休んでいた
俺は、ルイとちゃんと話せればいいなと思って学校に来たがタイミングがつかめずに下校になった

「今日、七夕祭りだね」
「うん、、、 」
「晴れてるから、天の川見えるんじゃない?」
「なぁ、、、 サトはどこまで俺らのこと知ってる?」

俺は変に話をそらしているサトに聞く

「俺は傍観者側のことだけだよ」
「そっか、、、 」
「そう」
「皆、サトみたいだったら、楽かな?」
「世界が俺みたいなやつらばっかりだったら、いくら俺でも引くわ
多分、マンガみたいな熱い友情話とか消滅だな」
「確かに」
「それに、楽じゃないよ
ほら、誰かが前に辛いに一つ足すと幸せになるって言ってたじゃんか
簡単に楽とか幸せってつかめないんじゃないの?」
「サトって厳しいよな~」
「まぁ、、、 」

「俺さ、ルイのことちゃんと考えた」
「うん」
「そしたら、俺結構ひどいやつだったわ」
「うん」
「ちゃんと向き合うよ
できれば、七夕祭りが終わる前がよかったんだけど、、、 ね」
「まだ、七夕祭り始まってすらないよ」
「、、、 そっか」

ルイと出会っていつもの俺とは確実に違うような変わったような気がした

サトと別れて、家につく
そして、荷物をおいて向かったのは彩羽の家だった

彩羽の家は相変わらず暗がりだった
夏なのに底冷えしていて、こんな家の中で1日中一人で、そしてこんな日にいさせたのかと思うと、辛くなる
今日、学校へ行くのを迷った理由はここにあった

でも、ルイにどうしても言いたかった
だけど、ルイには会えなかった

「彩羽、、、?」

階段を上がって彩羽の部屋の前に来る

「彩羽、入るよ」

彩羽の部屋に入ると、散乱している、かずと俺と彩羽の写真

散乱している中で彩羽は倒れるように寝ていた

頬とまつげはぬれていた

俺は彩羽の肩をゆすって起こす

「彩羽、彩羽?」

彩羽はむくっと起きて、俺を確認する

「けーちゃん」

1人にしてごめんと言いそうになる

何度来ても、彩羽の部屋は3人の思い出が消えることなく、一瞬見ただけでもあふれているのがわかる

「もうすぐ、七夕祭りがはじまる」

「かずくん、、、 」

そのいまにも消えてしまいそうな彩羽のかずを呼ぶ声
ふいに涙がこぼれそうになる

「けーちゃん」
彩羽が俺に抱きついてくる

俺はただただぎゅっと彩羽を抱きしめるだけだった


そのころ七夕祭りの会場ではもう出店が、開店して、人も増えつつあった

「サトー」
サトは地元の友達と来ていた
サトは飲み物を買うついでに、花火の場所取りメンバーにおれやこれやと用事を頼まれ、1人で出店をふらふらしていた

「あいつら、こんなに頼んで、、、 」
携帯にまた追加物が送られてきて、ちょっとサトはいらついていた

ドンっと誰かにぶつかって謝る
「すみません」
「あれっ、サト?」

ぶつかったのは、ルイだった

「あー、ルイ君」
ルイの周りには一緒に来たらしい人が見当たらなかった

「ルイ君、1人?」
「うん」
ルイは照れながらうなずく

「サトは?」
「俺は地元の友達と、
なんなら一緒に花火みる?」
「んあ、いや、、、 」
「ルイ君、1人でも祭り来るんだね
祭り好き?」
「彩羽と、慶介の地元のお祭りだったら行ってみたいなって思って」
「ならさ、2人と一緒に来ればいいじゃない?」
「でも、、、 」
「2人は来るよ」

ルイはびくっとする
ルイの中で2人は来ないと思っていたのかもしれない

「今年も来てると思うよ
ただ、俺達と花火みる場所が違うからな
でも、多分あそこだろうな、、、 」
「あそこ?」
「うん、あそこ」

サトが面白げに目をルイに向けた
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