心が聞こえる
無意識の感情
 ……人ごみは嫌だな……
 高層ビルが立ち並ぶ交差点で、信号待ちの先頭に立ちながら、大山一輝は思っていた。
 昼下がりの明るい日差しが、ビルの窓ガラスに反射して顔を照らす。
 やがて信号が青になり、一斉に歩き出す人々に、つられて歩く一輝。
 交差点の半分まで来た時、後ろから急ぎ足で横切る若いサラリーマン風の男の手が、一輝の手に一瞬触れる。
 ――軽い頭痛のような感覚が一輝を襲った――
 思わず立ち止まって、今の感覚を拭い去るかのように、額に右手を当てる。
 ……これだから人ごみは嫌いだ……
 顔をしかめながら見ると、信号は点滅を始めていた……
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