心が聞こえる
「私、あなたの名前聞いてない」
「あっ……そう言えば言ってなかった……」
「何? 自己紹介してなかったの?」
 悠の言葉と、今更ながら、自己紹介をすることに多少恥ずかしさを感じる一輝。
「……改めまして、大山一輝と言います……」
「――一輝ね。私のことは理恵で良いよ。悠君も美香ちゃんも、同い年なんだから敬語なんて使わなくて良いからね」
 明るい笑顔で言う理恵。
「じゃあ、俺のことも悠で良いよ」
「私も美香って呼んでもらって構わないよ」
「分かった――ところで、今から一輝と一緒にお茶行くんだけど、良かったら二人も一緒に行かない?」
「……あれ? 一輝と二人きりじゃないの?」
「私、あなた達ともお話してみたいから、嫌じゃなければ、と思って」
 突然の申し出に、悠は一輝を壁の隅に引っ張っていって、小声で話しかける。
「おい、一輝。彼女あんなこと言ってるけど、良いのかよ?」
「何が?」
「二人きりでデートするんじゃなかったのかよ?」
「別に? 俺の彼女って訳じゃないし……」
「……まぁ、良いなら良いけどよ……そんなんじゃなかなか彼女できないぞ?」
「何で?」
「……ま、いいわ……今度教えてやる……」
 脱力しながら、二人のところに戻る悠。一輝もそれに続く。
「一輝も別に構わないってさ。美香はどうする?」
「私も行きたい。女優さんと話せることなんて、滅多に無いことだし」
「じゃあ一緒に行きましょう」
 そして、四人は近くのカフェへと向かった。
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