心が聞こえる
「じゃあさ、何で芸能界に入ったの?」
「十七歳の時に、今の事務所の人に、街中でスカウトされたの。
 最初はどうしようか迷ったんだけど……
 元々少し女優に興味があったし、色々あって、これを機に挑戦してみようかなと思って……それで今の事務所に入ったの」
「スカウトかぁ、いいなぁ……私もスカウトされてみたい」
「お前じゃ無理だろ」
「――ちょっと悠、それどういう意味?」
 少し頬を膨らませて、悠の頭を軽く叩く美香。
「ウソウソ、冗談だってー」
 そんなやりとりに、二人して笑う一輝と理恵。
「罰として、後で肩揉んでよね――ごめんね、悠のせいで話逸れちゃって……
じゃあさ、家族は?」
「家族は、私と妹の二人」
「……あれ? ご両親は?」
「お父さんは私が小さい頃に離婚して、今どこで何してるか分からない。
 お母さんは、五年前に病気でね……」
「あっ……ごめん……変なこと聞いちゃって……」
 思わぬ話に、申し訳無さそうに謝る美香。
「ううん、平気。
 女優になったのもね。お母さんとお別れしたばかりだったから、私が妹を守らなきゃって思ってたってのもあって、決心したところもあるんだ」
 少しだけ寂しそうな目をして、そう語る。
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