心が聞こえる
「普段、大学の授業が終わった後は何してるの?」
「――俺はカフェで、美香が花屋でバイト。
 一輝は実家の小料理屋の手伝いって感じかな」
「へぇー。実家、小料理屋なんだね」
「まぁ、毎日ではないけど。
 店が忙しくなる曜日は必ず手伝ってるかな」
「どんなお店なの?」
「木造の小さな店だよ。二十人も入れば一杯になっちゃうくらいの。
 そこで母さんと二人でやってるんだ」
「へぇー。今度遊びに行っても良い?」
「来てもたいしたこと無いし――うるさいだけだよ?」
 苦笑しながら言う一輝。
「いいのっ!
 一輝の仕事してる姿、ぜーんぜん想像出来ないから……
 どんなのか見てみたいし」
「あんま人に見られたくないんだけどなぁ……」
 嬉しいような、恥ずかしいような微妙な表情をする。
「じゃあ、次の質問! 
 大学卒業したら、皆どんな仕事したいの?」
「私はね――フラワーデザイナーの仕事に就きたいと思ってるの。
 花屋でバイトしてるのも、少しでも花の勉強出来るようにってのと、やっぱり花が好
きだから、花の近くにいれるバイトをしたいなって思ってね」
 とても嬉しそうに語る美香。
「こいつに花なんて似合わないだろ?」
「悠っ! ホントに怒るよ!」
「だから、冗談だってー」
 またもや笑いながら美香をからかう悠。
 すると、理恵が小声で一輝に耳打ちする。
「この二人、いつもこんな感じなの?」
「まぁ、そうかな。
 ケンカするほど仲が良いってやつ?」
「あー、確かにね。
 何か、いつも悠がからかって、美香を怒らせてそう。
 二人とも子供みたいだよね」
「一輝くーん。理恵ちゃーん。
 二人とも、まる聞こえなんですけど」
 静かに、怒りの矛先を二人に向ける美香。
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