心が聞こえる
「――まぁまぁ……
 それだけ仲が良いってことだよ」
 少し慌てた様子でなだめる一輝。
「――そうそう……
 それで、悠は、将来どんな仕事がしたいの?」
 何とか切り抜けようと、話を強引に元に戻す理恵。
「俺は、心理カウンセラー。
 昔から、いろんな人の心のケアをする仕事がしたかったからさ」
「へぇー。すごいね。
 私の周りには、そういう人いないから、何かカッコイイな」
「まぁ、俺の場合は、身近に支えてやりたい人がいたから、この仕事に興味持ったんだけどね」
「身近な人って?」
 理恵に聞かれ、ほんのわずかだけ一輝と目が合うが、慌てて目を逸らす。
「ま……まぁ……それより、一輝にも聞いてやりなよ」
「俺は……今と同じかな?
 大学卒業したら、店を母さんと一緒にやっていく感じかな」
「一輝、料理とか出来るの?」
「まだそんなに上手くはないけど、母さんに教えてもらってるから、それなりには作ろうと思えば作れるよ。
 ――まぁ、まだまだ母さんの料理には敵わないけどね」
「そうそう、おばさんの料理めっちゃくちゃ美味いんだぜ」
 前のめりになり、顔を輝かせながら言う。
「へぇー。
 何だか、ますます一輝のお店に行ってみたくなっちゃったなぁ。
 ねぇ、やっぱり今日行っても良い?」
「えっ……まぁ、今日はお客さんも少ないから大丈夫だけど……
 妹さんはいいの? 帰りが遅いと心配するんじゃない?」
「妹には、後で連絡しとくから。
 帰りが遅いのなんていつものことだし」
「理恵が行きたいって言ってるんだから連れて行ってやれよ」
 何やら嬉しそうな顔をして、一輝を後押しする。
「……じゃあ、そろそろお店開ける時間だから、今から行く?」
「行く行く! よろしくおねがいしまーす。
 美香達も一緒に行かない?」
「あぁ、俺達はいいよ。
 今から二人でデートだし」
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