心が聞こえる
「一輝、料理とか出来るの?」
「まだそんなに上手くはないけど、母さんに教えてもらってるから、それなりには作ろうと思えば作れるよ。
 ――まぁ、まだまだ母さんの料理には敵わないけどね」
「そうそう、おばさんの料理めっちゃくちゃ美味いんだぜ」
 前のめりになり、顔を輝かせながら言う。
「へぇー。
 何だか、ますます一輝のお店に行ってみたくなっちゃったなぁ。
 ねぇ、やっぱり今日行っても良い?」
「えっ……まぁ、今日はお客さんも少ないから大丈夫だけど……
 妹さんはいいの? 帰りが遅いと心配するんじゃない?」
「妹には、後で連絡しとくから。
 帰りが遅いのなんていつものことだし」
「理恵が行きたいって言ってるんだから連れて行ってやれよ」
 何やら嬉しそうな顔をして、一輝を後押しする。
「……じゃあ、そろそろお店開ける時間だから、今から行く?」
「行く行く! よろしくおねがいしまーす。
 美香達も一緒に行かない?」
「あぁ、俺達はいいよ。
 今から二人でデートだし」
 そう理恵に言ってから、悠は、一輝に小声で耳打ちをする。
「邪魔者は消えるから、後はしっかりやれよ?」
「しっかりって……何をだよ?」
「理恵と二人きりになるんだから、チャンスだろ?」
「二人きりって……店には母さんもいるじゃん」
「……お前、やっぱりうといのな……」
 呆れた顔をして、ため息をつく。
「何を二人で内緒話してるの?」
 美香と理恵が不思議そうに二人を見つめている。
「男同士の話。
 さて、行きますか」
 そして四人は、カフェを後にした。
< 22 / 32 >

この作品をシェア

pagetop