心が聞こえる
「とりあえず飲み物かな? 何が良い?」
「そうだなぁ……」
 理恵は、カウンターの上に置いてあるメニューに目を通し――
「じゃあ、ゆずサワー」
「了解。
 食べ物はどうする? うちのオススメで良いかな?」
「うん」
 一輝は、慣れた手付きでテキパキとゆずサワーを作り、理恵に出す。
 そして丁寧に料理の盛り付けをしていく。
 理恵は、そんな一輝の働く姿を楽しそうに眺めている。
「……やっぱり、似合ってるね」
「……? 何が?」
「一輝がそうやってエプロンつけて、働いてる姿」
「まぁ長年やってるからね。
 人にあまりそんなこと言われないから、ちょっと恥ずかしいけど……」
 うつむき、はにかみながら理恵にそう言う。
「恥ずかしがることなんかないよ。
 すっごくカッコイイと思うよ」
「……あ……ありがとう……」
 ほのかに顔を紅くする一輝。
「……はい、これがうちのオススメ」
 そう言って、肉じゃがを理恵の前に置く。
「定番料理だけど、うちの人気料理なんだ」
「美味しそう。
 じゃあいただきます」
 箸を持ち、そっと口に肉じゃがを運ぶ。
「うん。すごく美味しい」
「でしょ? うちの母さん、すっごく料理上手いんだから」
「本当に美味しいです。作り方教えて貰いたいくらい」
「そう言って貰えると、嬉しいわ。
 他にも色々料理あるから、沢山食べていってね」
 笑顔で理恵に言う亮子。
< 24 / 32 >

この作品をシェア

pagetop