心が聞こえる

伝わる心

 翌日。
 一輝はいつものように、大学の木の下で、ゆっくりと沈んでいく太陽を見つめながら、昨日のことを思い出していた。
 優しく過ぎ行く風が、一輝の髪を静かに揺らしている。
「やっぱりいたな」
 聞き慣れた声に一輝が振り向くと、悠が美香と一緒に近付いて来た。
「まぁ、この場所は俺のオアシスですから」
 太陽を見つめ、遠くを見るようにつぶやく。
「それで、昨日はあの後どうなったんだよ」
 興味津々で、一輝に言い寄る悠。
「さー、どうなったんでしょうねー」
 視線はそのままに、一輝は、とぼけた顔をしてはぐらかす。
「もったいぶらずに教えろよー」
 期待した顔をしながら、一輝の肩をつつく。
「じゃあさ、いつもの飯屋でおごってよ。
 そしたら教えてあげてもいいよ」
「……お前、こういう時はチャッカリしてるよな……」
 苦笑しつつも、どこか嬉しそうな悠。
「じゃあ悠のおごりってことで!
 ……さて、話もまとまったところで――美香、行くぞ!」
 悠を置き去りに、美香に声をかけて歩き出す。
「じゃあ悠君! ヨロシク!」
 そう言って、美香も、そのすぐ後ろに付いて行く。
「……お前らなぁ……俺を置いて行くなよ……」
 どんどん歩いて行く二人に、寂しそうにグチる悠だった。
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