心が聞こえる
 数分後。
 理恵から返信メールが届いた。
『メールありがとう。
 私も、昨日はすっごく楽しかったよ♪ また今度遊びに行くね。
 それで、仕事の休みのことなんだけど、ちょうど来週の土曜日なら、一日中休みだから、遊園地行けるよ。
 じゃあ、詳しい予定決まったら教えてね。
 P.S.お誘い嬉しかったけど、でも何で敬語なの?(笑)』
 文章を何度も読み返している一輝の横から、メールを読んでいた悠が、
「ほらな? やっぱり一輝に気があるんだって。
 じゃなかったら、二人きりで遊園地なんて普通行かないぞ?
 せっかくのチャンスなんだから、しっかりとやれよ?」
 一輝の肩を叩きながら、自分のことのように嬉しそうな顔をする。
「女の子はデリケートなんだから、一輝がしっかりリードしてあげなきゃ、せっかくの楽しい遊園地デートも台無しになっちゃうからね」
「……そ……そう言われると、すっごくプレッシャーなんですけど……」
 美香の言葉に、追い討ちをかけられたように、一輝は苦笑いを浮かべる。
「だーいじょうぶ!
 そんな一輝君の為に、デートの日までに、俺と美香がみっちりとレクチャーをしてあげようじゃないか!」
「うん、もちろん!
 私もちゃんとレクチャー手伝うからね」
「……ねぇ……二人とも俺のことからかって楽しんでない……?」
 デートをする本人以上に、気分が盛り上がっているように見える二人に、プレッシャーを与えられているのか応援されているのか、よく分からなくなってきている一輝。
「からかってなんていないって。
 俺は、一輝のデートが上手く行くように応援したいだけだよ。
 それよりも、ともかくメールの返事をしようぜ」
 イマイチ乗り切れてない一輝だが、なんだか腑に落ちない表情をしながらも、理恵に返事のメールを送信した。
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