心が聞こえる
「遅れてごめんね」
 言葉ではそう言いながら、少しも反省していないような顔で、一輝に笑顔を振りまく理恵。
 今日は、最初に一輝が会った時とは少し違い、白と薄いピンクが映えた、かわいさと女らしさを意識したような服を理恵は着ていた。
 その姿に、ほんの少しだけ見惚れていた一輝だったが、すぐに意識を切り替え、背もたれにしていた壁から離れ、理恵の方へと歩いて行く。
 一輝も、黒と茶色で男らしさを意識した格好をしていた。
「大丈夫、気にしないで。
 じゃあ……行こっか」
 そして、あらかじめ買っておいたフリーパスチケットを理恵に渡し、二人は大きなゲートをくぐる。
 すると、大小さまざまなアトラクションが二人の視界一杯に広がっていた。
 立ち止まり、その景色にワクワクとした期待感を膨らませながら見渡す二人。
 すると、声に明るさを含ませた理恵が言う。
「最初、何に乗ろうかな?」
「やっぱり遊園地と言ったらジェットコースターでしょ!」
 一輝がジェットコースターを指さす。
「えっ……私、ちょっと絶叫系は苦手……なんだけどな……」
 言葉の最後の方は、消え入りそうなくらい小さな声になっていく。
「大丈夫だって! 俺が一緒に付いてるんだから」
 理恵の不安な態度を吹き消すかのように、元気に言うと、ジェットコースターの方へと歩いて行く一輝。
 仕方なく、それに理恵は付いていく。
 乗り場に着き、順番待ちの列に並ぶ。
 しかし、順番を待っている間も、理恵の顔には、ますます不安の色が濃くなっていった。
「……私、小さい頃乗ったジェットコースターが怖くて、それ以来乗ってないんだよね……」
 不安を紛らわす為か、なんとか乗らないで済むようにする為か、そんなことをつぶやく理恵。
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