心が聞こえる
「湯野さん、ちょっといいですか?」
 そう言いながら、一輝を立たせたまま、理恵は湯野に耳打ちをする。
よく分からない内に知らない人の前に連れて行かれて、一輝は戸惑っていた。
「本気で言ってるの!??」
 何を言われたのか、湯野はかなり驚いた声を上げる。
「もちろん本気ですよ♪ 彼、結構カッコイイし、良いじゃないですか?」
「……うーん……」
 腕組みをし、一輝を品定めするように見る湯野。
 見られている当の一輝は、何が起きているのか全く分からず、困惑した表情を浮かべるしかなかった。
 しばらく一輝を見た後、湯野が口を開く。
「……普通ならこんなことは有り得ないんだけど……まあ、たまには柔軟に考えて、やってみるか!」
「じゃあ、OKなんですね?」
「――あぁ、良いよ」
「ありがとう! 湯野さん大好き♪」
 そう言って湯野に抱きつく理恵。
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