俺様オヤジの恩返し

「なぁ、理恵子。俺と付き合って、再婚すればいい」


「……あの…突然で、何だか頭がグルグルふわふわしてるんだけど、
私が西藤せ『将吾…』…」

「私が将吾を好きになれば風俗をやめて再婚できる、と。そう言ってるの?」


「そう。だってもう理恵子、俺の事好きだろ?」


「………?そうだっけ。人を好きになる感覚、忘れちゃってるから、そんな気ぜんぜん……」


「からかって、かまったら食って掛かる、でも真面目な話の時は、俺を立てて優しいよな?気になってんだなって、嬉しかった…」


「そう……なのかな?」


「うん、絶対そう。絶対、俺のこと好きだって、近いうちに言わせてやる。
だから、あの店、辞めろよ……な?」


この有無を言わさぬ感じ何?……あぁ、これが俺様の特長か。


「……わ…わかった…。
明日とかは多分無理だから、今月一杯『なるべく早く』……うん、そ…そうする。

ありがとう、将吾。
好きなのかもしれないし、好きになれたらいいと思う」


「ぶっ……。理恵子って、天然なんだ、初めてわかった。
抱きしめてもキスしても嫌がらないどころか応えてくれただろう?
好きなんだよ。絶対」


すごい自信だなぁ…。
まぁ、そうかもしれないけど。
このまま流されていいものだろうか…。


「職業病かもしれない……慣れって怖いね。最低女だ。」


「ちゃんと、気持ちを込めただろ?
客ひとりひとりに、いちいち気持ち入れないんだろ」


「そうか…そうだよね。キス、上手だった」


「そりゃ、愛情込めましたから」


私はその夜、『まだ風俗嬢だから、出来ない』と誘いを断って、そのあと直ぐに帰った……。


救った女、なのかもしれない…。
でも、風俗で働くような女だけど、いいのだろうか……。






< 15 / 24 >

この作品をシェア

pagetop