俺様オヤジの恩返し
「私、10年ぶりだった…」
果てて仰向けに寝転んだ将吾の、腕の付け根に頭を乗せて、呟いた。
「あれだけ慣れてるのにな……普通は誰も信じないんじゃないか?」
「将吾……ありがとう。好きになってくれて」
「お一人様じゃなくなるな……老後は安泰だってか?ははは。
………理恵子、一緒に暮らそう、ここで。
マシン、ここに運び込めよ。
たまに俺だけにフルオケ聴かせてくれ。
………愛してる。再婚、しような」
「うん……うん。そうする。ありがとう。
将吾…好き………愛してる。
シワッシワのおばあちゃんとヨッボヨボのおじいちゃんになっても、ずっと一緒にいたい」
将吾とのはじめての夜、おやすみなさいのキスは、なかなか終わらなかった…。
私が救ったと言う俺様オヤジは、
お一人様を覚悟していた私に恋を教えてくれて、あたたかい愛情で、奈落の底からすくい上げてくれた。
これから二人で愛情に満ちた穏やかなハーモニーを奏でられる。
息の合った音楽家の老夫婦になるにはピッタリの幸せな暮らしが、
今、ここから始まる。
【完】