私と義弟とバレンタイン【短編】
「想いが変わってしまうのが心配なら、想いを通わせる努力をすればいい。
家族が変わってしまうのが心配なら、変わった先にはもっとたくさんの幸せがあるって信じようよ。
世間の目が心配なら、誰も俺らを知らない場所に逃げたっていいんだ。
なあ、そうやって考えれば、なんだってできる気にならない?」
そうやって、義弟は私の頭を撫でる。
どちらが歳上かわからないその仕草が、なんだか義弟じゃないみたいで、嬉しくて、少しさみしい。
「姉ちゃんも俺も幸せになる方法があるって、なんで信じられないことがある?」
綺麗事だって世間は笑うだろうか。
それでもやっぱり想いが変わってしまうと否定されるだろうか。
けれどどうして正論は信じられて、私たちは、私たち自身の想いを信じられないことがあるだろう。
「……信じたいな」
どうなるかも分からない未来に怯えて、本当に大切なひとをいま手離すよりも、
「俺の想いは変わんないよ。
姉ちゃん以外好きになったことないし、そうなる自分も想像できない」
きっと何もかもが上手くいく未来を信じて行動することのほうが、私はきっと後悔しない。
「ほんと、あんたって調子良いんだから」
「お褒めにあずかり光栄ですね」
「褒めてない」
そう言って私たちは笑い合った。