先生とチョコ。
先生とチョコ
「....先生」
「なんですか?」
そう言って、彼は手を止めることなくカチャカチャと科学準備室で、今度の実験の準備をしていた。
「...先生、チョコ...」
「チョコ、渡せたんですか?」
さらっと私を傷付けることを彼は、簡単に言う。
それはきっと自業自得で、しょうがないこと。
ある日の昼休み、次の授業で実験をするため、理科係りの私は準備を手伝っていた。そこで椅子に躓いて、転びそうになった私を先生が支えてくれたのだ。
先生が好きで、私は思わず言ってしまったのだ。
『好きです、先』
言いかけた私に、顔色ひとつ変えず先生は
『誰が好きなんですか?』
私は悲しくて、訳もわからず、嘘をついてしまった。
『.....先輩が、好きなんですよ』
『...そうですか、良いですね』
そう言って、先生は何てことないように微笑んでいた。
それから、私はたまに先生のいる科学準備室に行っては、恋愛相談をしていたのだ。存在しない先輩への恋を。
だから今、チョコ持ってここにいる私は、先生から見たら、"相談にのっていた生徒が、好きな先輩にチョコをまだ渡せずにいる"っということだ。
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