[短篇集]きみが忘れたむらさきへ。
漏れる嗚咽を閉じ込める様に、キスが降る。
いや………違う。
彼は飲み込もうとしているんだ、私のそれを。
優しい人、そして残酷な人。
私に悲しみを残さない様に、奪っていく。
全てを壊して、明るい世界で抱き合う勇気が私達にはなかったのだ。
ただ、それだけ。
愛しているし、愛されているけれど。
それももう、終わり。
「愛してる」
だから、さようなら。
『腕に嵌めた枷、首に嵌る鎖。今日だけは外させて』
(20160215)