[短篇集]きみが忘れたむらさきへ。
「寝たら朝なんかすぐだろ。寝ろ、寝るんだ」
わたしに言っているようで、実は自分に言い聞かせているだけの功に背を向けて、布団に入る。
眠ったら、朝が来てしまう。
朝が来て、電車に乗って、遅刻して学校に行ったら……
またいつもと同じで、少し違う日々が始まる。
「ね……功」
「ん?」
「頑張ってみようかな、わたし」
我ながら単純だ。
簡単じゃないのに、わかってるのに。
諦めたら、胸の奥に何かを残してしまいそうで。
つい、言葉にしてしまった。
「そっか……うん、頑張れ。…じゃねえな、頑張れって言うとプレッシャーになるか 」
「ううん、いいよ」
功からの頑張れは不思議と嫌じゃない。
重りにもならない。
ただ、優しい熱を持って、そこにあるだけ。