[短篇集]きみが忘れたむらさきへ。


たとえば

僕らが点と点で結ばれた、夜空に埋め込まれた星の様になれたのなら。


それで、良かったのに。

それが、良かったのに。


手を引いて、手を引かれて。

誰もいない世界へ、何もない世界へ行きたかった。


『僕ら2人、ずっと一緒にいられたら』


そんな事は望まない。

ガラクタの中で、壊れた玩具箱の中で

君と2人、骨になっても傍にいられるのなら、それが幸せだった。


世界に弾かれた僕が、それでも世界でしか生きられないというのなら

君を連れて、足が綻ぶまで、息が捩れるまで、走れば良かった。


君を連れて逃げ出せば、辿りついた先がどこだって、きっと生きていられた。


< 54 / 112 >

この作品をシェア

pagetop