[短篇集]きみが忘れたむらさきへ。
これから、もっともっと笑って、大切な人のそばで生きていくきみへ。
伝えたいことなんてひとこともない。
残したいものなんてひとつもない。
だけれど、黙って僕が出ていったあと、ひとりで帰宅をしたきみが、ひとりで涙を流すことがないように。
さよならだけは、言わせて。
金曜日の夜、日付が変わる間際。
きみは今、泣いているだろうか。
それとも、笑ってる?
どちらにしても、これから泣かせてしまうのだろうけれど。
『さよなら』きみへ。
送信完了の文字は、滲んでいた。
(きみの優しさが、きみを笑わせる日まで)