甘党バレンタイン
ピンポーン
と、チャイムを鳴らすと、すぐにドアが開いて拓実が顔を覗かせた。
休みの日も抜けることなくイケメンだ。
むしろ、拓実の黒髪は今日の方がツヤツヤしてるように見える。
「おじゃましまーす」
入って、という拓実の声で家に入ると、
「うわぁ!すっごい、いい匂い!」
ふわっと唐揚げや、他の食べ物のいい香りが流れ出てきた。
「夏樹のために、作って待ってたからね」
「ほ、ほんとに!?」
「うん。ほら、早くリビング行こう。
早くしないと冷めるから」
「う、うん!」
拓実はやっぱ凄い。
イケメンだし、モテるし、男子力ってのもあるのに、料理もできる。
リビングへのドアを開けると、さらにいい香りが広がる。
「ふわあああ!!」
「あっははっ、何だよ、ふわあああって」
「だ、だって凄いよ!」
ほんとに凄い。
リビングの大きなテーブルにはいっぱいのご馳走。
揚げたての唐揚げに、マカロニサラダ、色の鮮やかなかぼちゃのスープに……キリないからその他もろもろ。
「ほら、早く座って」
「う、うん!」
座ると真っ白の取り皿とお箸を渡された。
「飲み物、お茶でいい?」
「うん」
はいっと渡されたコップを受け取る時に、指が触れ、体の体温が上がった気がするが、すぐにコップの冷たさですぐに冷やされた。
拓実は気にしてないみたい……。
「さてっと!夏樹!」
「うん?」
呼ばれて、拓実の方を向くと、お茶が入ったコップを軽く持ち上げて、こちらへ傾けていた。
「え…?あ!」
こういうことか。
「「かんぱーい!」」
小さくかちんっと音を立てて、ふたつのグラスがぶつかる。
「へへっ、付き合って2年おめでとう」
「もうー。
去年も言ったけど、付き合って○○おめでとうって何なんだよ」
「あれ?言ってたっけそんなこと」
「あれ?心の声かも」
おいおい、と拓実はツッコミをしていたが、俺がぷっと思わず吹き出すと、拓実も吹き出して思いっきり笑った。
あぁ。本当に一時はどうなるかと思った。
こうやって今年も拓実と過ごせてよかった。
笑い疲れて、ふぅと息を吐く。
「ふぅ……、食べよっか」
「おう」
そして、僕らは箸に手をかけた。