甘党バレンタイン



「うわぁああ!?」

俺の叫び声が部屋に大きく響き渡る。


び、ビックリした……。


驚いた原因は突然耳元で鳴り響いた着信音だ。
思わず僕は飛び起きてしまった。

イヤホンをしていたのと、着信音の音量調節が出来ていなかったせいで、大音量で鳴り響く音楽に、鼓膜を破られるかと思った。



「で、電話か…?」


うっすら目を開けてスマホの画面を見ると、


「拓実っ!?」


拓実からの着信だった。

はっ早く取らないと!

急いで起き上がってスマホを耳に当てる。



「もっ、もしもしひっ!」

寝起きのせいで噛んだ…。
は、恥ずかしい……


『あははっ、夏樹、今起きたの?
臚列回ってないよ』

「う、うるさいなー。暇だったから寝てたんだよ」

『暇なの?』

「当然じゃん、もともと拓実を家に呼ぶ予定だったんだから」

ほんと、楽しみにしてたのに。

『あ、そっか。ごめんな。
……それの埋め合わせって訳じゃないけど、今から俺んち、来ない?』

「今日、日曜だよ?家の人に迷惑かかるんじゃ…」

もちろん拓実の家には行きたいけど、どうせなら僕の家で2人っきりでいたい。

でも、そんな願いは次の拓実の言葉で消え去った。


『俺の家、今日は朝まで誰も居ないから』



…拓実の家で2人っきり……!?


「…ほ、ほんとに行ってもいいの?」

『いいって。というか、いつも来てんじゃん』

「そ、そだよね。
…うん!今から準備するから待ってて!」

『おう。じゃあ、5時あたりだな』

「うん。じゃあまた後で!」

『ん』



僕は拓実が電話を切ったのを確認してから、そっとホームボタンを押して……



やったあああ!!!


思わずガッツポーズをする。



さーってと、何、服きようかな。

そういえば5時頃に来てって言ってたよな。


ん……?
5時頃……?


時計を見る。
壁に掛けられたアナログ時計は4時45分を指している。


あ、あれ?
今日の1日、ほとんど寝てた……。


せっかくの休みを無駄にしたような。
でも、今から拓実に会えるから無駄じゃなかったような。


そんな複雑な思いで準備をして、家を出た。
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