狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
王の務め
―――パタン…
キュリオが歩く長い廊下の所々で銀の燭台が灯りを掲げながら優しい光を放っている。
通常の半分程度の睡眠しかとっていないにも関わらずキュリオの眼差しには陰りが見られない。そして欠伸(あくび)を我慢しているような気配もなく、常に完璧であるキュリオの王としての姿勢は他の王も見習うべきところと言えよう。
階段を下りて行くとパンの焼ける芳醇な香りがあたりを包んでおり、王の生活リズムに合わせた従者たちの機敏さにもつくづく感心させられる。
キュリオが広間の扉へ立つと、ゆっくり開かれたその向こうには…
「おはようございますキュリオ様」
両脇に立った数人の女官と侍女、大臣らが王を出迎える。
「おはよう。…皆朝早くにすまないね」
「とんでもございませんわ!キュリオ様に比べましたら私たちなんて…っ…」
手にしたハンカチで目元を抑える女官たちにキュリオは表情も崩さず言葉を紡ぐ。
「…しばらくの間、アオイを頼む」
「もちろんですわ!!」
皆が我が娘のように大切に育ててきた幼い姫をみすみす孤独に追いやるような真似は決してしない。
しかし、キュリオしか埋められない心の隙間がある事も彼女らは知っている。
それから手早く朝食を済ませたキュリオはすぐにガーラントと合流すると、どこかへと馬を走らせて行ったのだった―――。