狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
負のスパイラルⅡ
じわりと涙を浮かべたアオイは意を決して部屋を飛び出す。
急に手のひらを返されたと感じた彼女の心には虚無な空間が広がり、それを埋めようと必死になっている。
「…ハァッ…ハァ……」
寝間着の乱れも気にせずパタパタと廊下を駆けて行くとすぐにキュリオの部屋の扉が見えた。
肩を上下させながら呼吸を整え、中の様子を伺ってみるが…
(…何も聞こえない…もう眠っていらっしゃるのかしら…)
もしかしたら聞き訳がないと怒られるかもしれない。
大きくなったのに頼りがないと呆れられるかもしれない…。
激しく拒絶されたら立ち直れなくなる自分を想像しながらも、わずかな期待を込めて扉を開く。
自室よりもはるかに長い時間を過ごしたキュリオの部屋。
いつも綺麗に整えられており、どの部屋よりも一層清らかな空気に満ちたこの部屋に一歩入れば彼に抱(いだ)かれているような不思議な感覚に陥るほど王の力が満ちている。
一歩二歩と進んでいくと…
「お父様いない…」
静まり返った室内からは水音も聞こえず、湯浴みをしている可能性も低い。
(…別の部屋で眠っているなんて事…)
何もわからぬまま床に膝をつき、ベッドに寄りかかるように眠りに落ちて行くアオイ。
目覚めたらいつものように微笑みかけてくれる優しいキュリオを想像しながら―――。