狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~

垣間見える優しさと…③

「ははっ!たくさん飲め!」


(不思議な人…)


悠久の民を襲い、時にはその命までも奪い尽くしてしまうという彼ら。
猫だから無事なのだろうか?という疑問が浮かび上がるが、先ほどのアイスブルーの瞳を持つヴァンパイアの話を聞けば残酷な運命が待ち受けていることは明らかだった。

しかしこの青年からはそのような言葉は一度足りとも出てこない。
むしろこの彼から感じるのは…大きな安心感だ。


(おいしそうなミルク…頂きます)


子猫の姿を映した真っ白なミルク。それはなんら悠久のものと違いはなく、芳醇な香りを漂わせている。
ペロペロとミルクを舐めはじめた子猫の傍で椅子に腰かけた青年は頬杖をつきながら楽しそうに微笑んだ。


「餌は蛙でも食ってたのか?」


『…っ!?』


ビクリと体を震わせた子猫が恐る恐る青年を見上げた。


(…出されたらどうしよう…っ!!)


雨に大喜びする蛙の大合唱を脳裏で聞きながら子猫のアオイは懸命に拒絶してみせる。


「にゃっ!にゃにゃっっ!!」


『ミルクだけでっ!!ミルクだけで十分ですっ!!』


「ははっ!わかったわかった!デカイやつ捕まえて来てやるからな!!」


目を細めて笑う青年にアオイの心は冷や汗ダラダラだ。


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