狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「お前の邪念など大したものではないだろう。せいぜい私の目を盗んで……」
そこまで言いかけて。
(……夜の森へカイと出かけていることは黙っていたほうが良さそうだな)
バレたと知れば違う方法で城を抜け出すかもしれない。
さらに人というのは、ひとつの秘密を暴かれると別のカタチでまた秘密を作ろうとする不思議な生き物なのだ。
「え゙ッ……!?」
(ど、どうして黙ってしまったのかしら……、……っもしかして……私が変なこと考えてるってバレちゃったとか……)
互いに余計な心配をしているところで、キュリオの前髪から落ちた一滴の水滴が彼の陶器のような頬を濡らし――
「あ……」
キュリオが自分にそうするように、思わずアオイも手を伸ばすと……
「…………」
空色の瞳が重く圧し掛かり、手首を押さえ込まれたかと思うと勢いよく引かれて抱きしめられる。
「……っ!」
正座のまま姿勢を崩したアオイは膝立ちの状態から横抱きにされると、いつのまにか痺れていた足を優しく撫でられた。
「きゃっ……!」
まるで電流が走ったかのようにビリビリと痛む脹脛(ふくらはぎ)は邪念を一気に払拭してくれたが、安心するのも束の間、今度は強めに揉みしだかれ悶絶してしまう。
「ぁっ……ま、待って……お父様! んんっっ……」
「血流が悪くなれば痺れて当然だ。足先が冷たくなっている」
平気で足の裏やつま先まで念入りにマッサージする白魚のような手に、地を這うそこを滑られると申し訳なさが沸々と込み上げてくる。
「お父様っ……あぁっそんなっっ! や、やめっ……」
羞恥と痛みに真っ赤になりながら、なんとか止めてもらおうと足を這いまわる手を懸命に押さえるが、不機嫌な眼差しがアオイを凍りつかせた。
「――お前の体は私のものでもある。触れることに許可など不必要だ」