狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
――あれから程なくしてキュリオとともに彼のベッドへ入ったアオイ。わざわざ広いベッドの上で身を寄せ合って寝る必要はないのだが、幼き頃からそうして眠っているのだから今更離れようとも思わないのはキュリオの作戦勝ちだろうか?
腕枕はもちろんのこと、逆の手は寝相の悪いアオイの体を抱きしめるように回されている。そしてこめかみに感じる清らかな息遣い。
いつもなら優しい父の胸に顔を寄せて眠りに落ちるが、今夜は仰向けになって抱きしめられるのが精いっぱいだ。
"それほど気になるのなら、いっそ口づけを交わしてしまおうか"
「…………」
(お父様はいつもたくさんの口づけをくださるけど……それと違うのかな……)
目を閉じたキュリオの顔を盗み見るように顔を傾けると、視界に飛び込んだ形の良い唇に視線が釘付けになる。
(綺麗な唇……柔らかそう……)
アオイは自分についているものとは別次元のものを見るように惹きこまれ、うっとりと手を伸ばす。
「……っ」
しかし、唇に触る勇気までは持ち合わせておらず、宙に浮いた手が辿り着いた先はキュリオの頬だった。アオイはその洗い立ての肌を撫でながらゆっくり目を閉じる。
(お父様の肌……気持ちいい……)
「はぁ……」
(そういえば、自分から触れたことってあまりなかったかも……私はお父様に触れられるのが好き。だけどお父様は……?)
それだけではない。物心ついた頃から常に感じていたのは優しいぬくもりや眼差し、向けられた微笑みを自分はきちんと返していただろうか?
そんなことを考えながら羨ましいほどに瑞々しく、繊細な肌に別れを告げて手を離そうとすると……
「お前の手は心地良いな」
離れていくぬくもりを追うようにアオイの手のひらを行き来する感触と声。
「あ……」
疑問を抱き、視線を向けた先では穏やかな光を湛えた空色の瞳がこちらを見つめている。
(……お父様少しご機嫌がよくなったみたい……?)
「ごめんなさい、起こしてしまいましたか?」
「いや、初めから眠っていないよ。アオイから触れてくれるとは……起きていた甲斐があった」
あまり耳にしない言葉を贈られ、くすぐったいような不思議な感情がアオイの心を満たすと――
「お父様はいつも与えてくれるばかりで、私はなにも……」
気落ちしたように目を伏せる娘へキュリオは小さく微笑み、さらに顔を寄せて告げる。
「お前は私が与える愛のすべてをただ受け取ればいい」
頬を撫でるアオイの手へ手を重ねながら体の密着度を高めてくるキュリオ。暗闇のなか声を潜めて話すのは、カイと一緒にこっそり抜け出す夜くらいだったアオイはその時とはすこし違う胸の高鳴りを覚える。さらに時折聞こえる布擦れの音がやけに生々しく聞こえ、それが見えない場所でうごめくキュリオの手かと考えるとまたも邪念が芽生えそうになって深呼吸を繰り返す。
「……っ、はい……」
彼女が頷いたことを見届けたキュリオは"……もう遅い時間だ。おやすみ"と囁き、アオイの手のひらへ己の唇を押し当てた――。
腕枕はもちろんのこと、逆の手は寝相の悪いアオイの体を抱きしめるように回されている。そしてこめかみに感じる清らかな息遣い。
いつもなら優しい父の胸に顔を寄せて眠りに落ちるが、今夜は仰向けになって抱きしめられるのが精いっぱいだ。
"それほど気になるのなら、いっそ口づけを交わしてしまおうか"
「…………」
(お父様はいつもたくさんの口づけをくださるけど……それと違うのかな……)
目を閉じたキュリオの顔を盗み見るように顔を傾けると、視界に飛び込んだ形の良い唇に視線が釘付けになる。
(綺麗な唇……柔らかそう……)
アオイは自分についているものとは別次元のものを見るように惹きこまれ、うっとりと手を伸ばす。
「……っ」
しかし、唇に触る勇気までは持ち合わせておらず、宙に浮いた手が辿り着いた先はキュリオの頬だった。アオイはその洗い立ての肌を撫でながらゆっくり目を閉じる。
(お父様の肌……気持ちいい……)
「はぁ……」
(そういえば、自分から触れたことってあまりなかったかも……私はお父様に触れられるのが好き。だけどお父様は……?)
それだけではない。物心ついた頃から常に感じていたのは優しいぬくもりや眼差し、向けられた微笑みを自分はきちんと返していただろうか?
そんなことを考えながら羨ましいほどに瑞々しく、繊細な肌に別れを告げて手を離そうとすると……
「お前の手は心地良いな」
離れていくぬくもりを追うようにアオイの手のひらを行き来する感触と声。
「あ……」
疑問を抱き、視線を向けた先では穏やかな光を湛えた空色の瞳がこちらを見つめている。
(……お父様少しご機嫌がよくなったみたい……?)
「ごめんなさい、起こしてしまいましたか?」
「いや、初めから眠っていないよ。アオイから触れてくれるとは……起きていた甲斐があった」
あまり耳にしない言葉を贈られ、くすぐったいような不思議な感情がアオイの心を満たすと――
「お父様はいつも与えてくれるばかりで、私はなにも……」
気落ちしたように目を伏せる娘へキュリオは小さく微笑み、さらに顔を寄せて告げる。
「お前は私が与える愛のすべてをただ受け取ればいい」
頬を撫でるアオイの手へ手を重ねながら体の密着度を高めてくるキュリオ。暗闇のなか声を潜めて話すのは、カイと一緒にこっそり抜け出す夜くらいだったアオイはその時とはすこし違う胸の高鳴りを覚える。さらに時折聞こえる布擦れの音がやけに生々しく聞こえ、それが見えない場所でうごめくキュリオの手かと考えるとまたも邪念が芽生えそうになって深呼吸を繰り返す。
「……っ、はい……」
彼女が頷いたことを見届けたキュリオは"……もう遅い時間だ。おやすみ"と囁き、アオイの手のひらへ己の唇を押し当てた――。