狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
ひとまずキュリオの寝室に置いてある予備の制服を取り出し、いつでも出かけられるよう準備を整える。やがて着替えが終わると、ふたたび窓の外を覗いてカーテンを開き空を仰いだ。
「……まだ薄暗いなんて……」
アオイの経験から合致する記憶がひとつ浮かび上がる。
――いつもは昼寝の時間だというのに、カイやアレスと遊ぶことが楽しくてしょうがない幼少期。こうしてキュリオの寝室へ連れてこられて暗幕のカーテンを閉めても、わずかながらに差し込む日の光が眠気を連れて行ってしまう。そしてエネルギーに満ち溢れた光が恋しくてたまらない幼いアオイのことを十分に理解していたキュリオは一瞬にして部屋に闇を包んだ。
『アオイ、幼子は寝ることも大切な仕事だ。いまはゆっくりおやすみ』
「もしかして……お父様の魔法?」
キュリオが王としての仕事を優先するのは当たり前だ。
しかし、先ほどのキュリオの話からは仕事の内容まではわからない。寝過ごしてしまったことを、起こしてくれなかったキュリオや皆へ当たるのはお門違いだ。それだけは自分の責任に他ならないため、急いで自室へ向かい鞄を手に飛び出した。
(いまやるべきことは……っ学校へ向かうことっ!)
長い階段を飛ぶように駆け降り、鞄でバランスをとりながら手摺を軸に遠心力に耐える。やがて途中の階で食事を手にした先ほどの侍女と連れだって飲み物を運ぶカイと出くわしたアオイ。
「アオイ姫様! そんなまさか……学校へ行かれるおつもりですか!?」
制服に鞄、そんな姿の彼女が療養する意志のないことは明白でカイは諌(いさ)めるが……しかし、気持ちを汲んだ隣りの侍女はアオイを宥(なだ)めるような言葉を発する。
「……姫様、お気持ちはわかりますが……無理をなされてはお体に障ります」
「私、……大丈夫だよ? 心配されることはなにも……ほら、この通り!」
「……っ危ない!」
階段の上でジャンプしたアオイは見事に足を踏み外し、盛大な尻餅を……つく前にカイが抱きとめた。
「ご、ごめんっ……!」
予想外の出来事にアオイの心臓はバクバクと異音を奏で背中に冷たい汗が流れると、頭上で安堵のため息をついたカイに強く抱きしめられる。
「はぁー……っこんなおぼつかない足取りでどうするおつもりです? 途中で倒れでもしたら、俺……」
「……っ! カイ、お願い! 学校まで連れて行って!」
「え、……で、ですがお体は……」
(やっぱり皆、私が具合悪いと思ってるんだ……でも今は否定するより認めたほうが早い! ごめんカイ!)
「う、うん……! ゆっくり休んだからもう大丈夫。無理はしないって約束する」
「……俺! アオイ姫様の授業が終わるまで学園の外で待機しておきますから! 馬で帰りましょう!」
「そ、そこまでしなくていいよ? 帰りは途中までミキやシュウと一緒だし」
「じゃあ……離れてついて行くなら問題ないですよね?」
すこし寂しそうに言葉を紡いだカイは、どうあっても引き下がるつもりはないらしい。
「え、えっと……」
ナイト役を買って出てくれたカイの腕と眼差しは強く、頷くまでこの手を離さないという強い意志がひしひしと伝わってくる。
「そうだね、それなら……」
苦笑いしながら渋々了承したアオイの前で、騒ぎを聞きつけて来た別の侍女がカイの放り投げた飲み物の後始末をしながら微笑む。
「姫様は馬のご用意ができるまでお食事を召し上がっていてくださいませ」
「……うんっ!」
とりあえず快く送り出してもらえることにほっと胸を撫で下ろしたアオイが頷くと、笑顔のカイが"では後ほど!"と扉を出て行った――。
「……まだ薄暗いなんて……」
アオイの経験から合致する記憶がひとつ浮かび上がる。
――いつもは昼寝の時間だというのに、カイやアレスと遊ぶことが楽しくてしょうがない幼少期。こうしてキュリオの寝室へ連れてこられて暗幕のカーテンを閉めても、わずかながらに差し込む日の光が眠気を連れて行ってしまう。そしてエネルギーに満ち溢れた光が恋しくてたまらない幼いアオイのことを十分に理解していたキュリオは一瞬にして部屋に闇を包んだ。
『アオイ、幼子は寝ることも大切な仕事だ。いまはゆっくりおやすみ』
「もしかして……お父様の魔法?」
キュリオが王としての仕事を優先するのは当たり前だ。
しかし、先ほどのキュリオの話からは仕事の内容まではわからない。寝過ごしてしまったことを、起こしてくれなかったキュリオや皆へ当たるのはお門違いだ。それだけは自分の責任に他ならないため、急いで自室へ向かい鞄を手に飛び出した。
(いまやるべきことは……っ学校へ向かうことっ!)
長い階段を飛ぶように駆け降り、鞄でバランスをとりながら手摺を軸に遠心力に耐える。やがて途中の階で食事を手にした先ほどの侍女と連れだって飲み物を運ぶカイと出くわしたアオイ。
「アオイ姫様! そんなまさか……学校へ行かれるおつもりですか!?」
制服に鞄、そんな姿の彼女が療養する意志のないことは明白でカイは諌(いさ)めるが……しかし、気持ちを汲んだ隣りの侍女はアオイを宥(なだ)めるような言葉を発する。
「……姫様、お気持ちはわかりますが……無理をなされてはお体に障ります」
「私、……大丈夫だよ? 心配されることはなにも……ほら、この通り!」
「……っ危ない!」
階段の上でジャンプしたアオイは見事に足を踏み外し、盛大な尻餅を……つく前にカイが抱きとめた。
「ご、ごめんっ……!」
予想外の出来事にアオイの心臓はバクバクと異音を奏で背中に冷たい汗が流れると、頭上で安堵のため息をついたカイに強く抱きしめられる。
「はぁー……っこんなおぼつかない足取りでどうするおつもりです? 途中で倒れでもしたら、俺……」
「……っ! カイ、お願い! 学校まで連れて行って!」
「え、……で、ですがお体は……」
(やっぱり皆、私が具合悪いと思ってるんだ……でも今は否定するより認めたほうが早い! ごめんカイ!)
「う、うん……! ゆっくり休んだからもう大丈夫。無理はしないって約束する」
「……俺! アオイ姫様の授業が終わるまで学園の外で待機しておきますから! 馬で帰りましょう!」
「そ、そこまでしなくていいよ? 帰りは途中までミキやシュウと一緒だし」
「じゃあ……離れてついて行くなら問題ないですよね?」
すこし寂しそうに言葉を紡いだカイは、どうあっても引き下がるつもりはないらしい。
「え、えっと……」
ナイト役を買って出てくれたカイの腕と眼差しは強く、頷くまでこの手を離さないという強い意志がひしひしと伝わってくる。
「そうだね、それなら……」
苦笑いしながら渋々了承したアオイの前で、騒ぎを聞きつけて来た別の侍女がカイの放り投げた飲み物の後始末をしながら微笑む。
「姫様は馬のご用意ができるまでお食事を召し上がっていてくださいませ」
「……うんっ!」
とりあえず快く送り出してもらえることにほっと胸を撫で下ろしたアオイが頷くと、笑顔のカイが"では後ほど!"と扉を出て行った――。