狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「……おはようございます、アラン先生……」
上着を脱ぎ、白いシャツを腕まくりした彼は首元からシルバーのホイッスルを下げており、もう一人の体育教師とともに生徒の指導にあたっている最中だった。
無意識のうちに後ずさりしてしまいそうになるのを必死に堪えながら挨拶するも……
「おはようアオイさん。……おうちの人の目を掻い潜ってきたのかい?」
首を斜めに傾け口角を上げるアラン。だが、その瞳はまったく笑っておらず、声は氷のように冷たかった。
「いえ……、それは…………」
(快く送り出してもらった、なんて言ったら皆に迷惑がかかっちゃう……)
「おいアラン! 病人責めてんじゃねーよっ! いこうぜアオイ!」
口籠ったアオイを守るようにアランの目の前に立ちながら、肩を抱いてそのまま立ち去ろうと試みるシュウ。
しかし……
「彼女を気安く連れまわすのはやめてくれたまえ。……体調不良のアオイさんは私と保健室へ……いいね?」
「……っ」
有無を言わせない彼の強い口調にアオイは俯くことしかできない。
素早くシュウの手を払ったアランが身を翻したかと思うと、一瞬にして姿を消してしまったふたりにシュウは呆気にとられている。
「アオイ……?」
「シュウ? あんた誰としゃべってんの?」
水分補給に現れたミキが、ひとりで喚きたてている親友のもとへやってきた。
「アオイがいまさっきそこに……けど、アランが来たとたん居なくなっちまって……」
「んん? 話がみえないんだけど……アオイは今日休みってアラン先生言ってたじゃん。それとも……会いたいばっかりにとうとう幻覚でも見た?」
豪快に笑い声をあげながらシュウの肩をバシバシと叩くミキ。
しかし動体視力が異常に発達しているシュウ。その彼が見失うほどの動きをアランがどう繰り出したのかはわからないが、まさかアオイの姿が蜃気楼だったとでもいうのだろうか?
「……見間違いなわけ、ねぇよ……」
手のひらに残る柔らかい感覚だけが、その真実をひっそりと物語っていた――。
上着を脱ぎ、白いシャツを腕まくりした彼は首元からシルバーのホイッスルを下げており、もう一人の体育教師とともに生徒の指導にあたっている最中だった。
無意識のうちに後ずさりしてしまいそうになるのを必死に堪えながら挨拶するも……
「おはようアオイさん。……おうちの人の目を掻い潜ってきたのかい?」
首を斜めに傾け口角を上げるアラン。だが、その瞳はまったく笑っておらず、声は氷のように冷たかった。
「いえ……、それは…………」
(快く送り出してもらった、なんて言ったら皆に迷惑がかかっちゃう……)
「おいアラン! 病人責めてんじゃねーよっ! いこうぜアオイ!」
口籠ったアオイを守るようにアランの目の前に立ちながら、肩を抱いてそのまま立ち去ろうと試みるシュウ。
しかし……
「彼女を気安く連れまわすのはやめてくれたまえ。……体調不良のアオイさんは私と保健室へ……いいね?」
「……っ」
有無を言わせない彼の強い口調にアオイは俯くことしかできない。
素早くシュウの手を払ったアランが身を翻したかと思うと、一瞬にして姿を消してしまったふたりにシュウは呆気にとられている。
「アオイ……?」
「シュウ? あんた誰としゃべってんの?」
水分補給に現れたミキが、ひとりで喚きたてている親友のもとへやってきた。
「アオイがいまさっきそこに……けど、アランが来たとたん居なくなっちまって……」
「んん? 話がみえないんだけど……アオイは今日休みってアラン先生言ってたじゃん。それとも……会いたいばっかりにとうとう幻覚でも見た?」
豪快に笑い声をあげながらシュウの肩をバシバシと叩くミキ。
しかし動体視力が異常に発達しているシュウ。その彼が見失うほどの動きをアランがどう繰り出したのかはわからないが、まさかアオイの姿が蜃気楼だったとでもいうのだろうか?
「……見間違いなわけ、ねぇよ……」
手のひらに残る柔らかい感覚だけが、その真実をひっそりと物語っていた――。