狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
 アランに囲われるようにベッドへ身を沈めたアオイは、返事に迷いながらも小さく首を振って答えた。

「……いまは添い寝も睡眠も必要ありません。私は……勉強がしたいんです」

 切実に訴える幼い瞳。しかし、そんな言葉はすべてお見通しとばかりに伸びてきたアランの指先が、アオイの前髪を愛おしげに梳いた。

「わざわざ遠いこの地へ足を運ばずとも勉強はできるだろう?」

「……っ今日の遅刻を数えても、お父様との約束にはまだ届いていないはずです!」

 激しく"イヤイヤ"で訴える愛娘を宥めるように、まわした腕で背を撫でながら耳元で呟く。

「私が何故こんな教師の真似事をしていると思う?」

「そ、それは……」

(……そんなのひとつに決まってる……)

 わかっていても口にするのは躊躇ってしまう。それは自惚れかもしれないというわずかな自信のなさからだった。

「お前が城の中で大人しくしているなら私の手間も省ける。それでも外の世界が知りたいというのなら共にどこへでも足を運ぼう」

 アランが翳した手の中で蜃気楼のように光るのは、見たこともない悠久の大自然や歴史的価値のある古びた建造物たちだ。

(……そうじゃない、私が欲しいのはっ……)

 どこかズレてる父親との想いが親子の愛情ではない何かを感じさせる。

「……お父様、お願いです。お城の中でワガママはもう言いません……だから、それ以外のところでは……もう少し自由にさせて頂けませんか?」

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