狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「良かったアオイ! やっぱり学校に来てたんだねー!」

「ミキ……シュウもごめんね、途中でいなくなったりして……」

(……アラン先生が出て行ったあとで良かった……)

 四時限目の終了の鐘が鳴ると同時に教室を飛び出したミキとシュウ。シュウの記憶を頼りに保健室へとやってきたところで、扉を出ようとするアオイと偶然顔を合わせることができたふたりは嬉しそうにアオイを取り囲む。

「そーそー! シュウってば"アオイが消えた!"って大騒ぎしちゃってー!」

「……さ、騒いでなんかねぇだろ! なぁアオイ……アランに弱み握られてるとか、そういうのあったりすんのか?」

 赤くなって否定したかと思いきや心配そうに表情を曇らせたシュウ。彼の問いは紛れもなくアオイとアランの関係に疑念を抱いた故のものだった。

「……え?」

 アオイは親友の顔を見つめたまま硬直し、口にしてはいけないことを咄嗟に頭の中で整理し始める。

(体調が悪いのは寝不足からくるもので……、お父様はそれが心配で私をお休みさせようと……でも私が学校に来ちゃったからアラン先生は怒ってて……えっと……、……)

「……お前がアランに好い様にされてる気がして、さ……もしそうだったら俺、絶対あいつのこと許さねぇから!」

 ガシッと両肩を掴まれ、熱い眼差しを受けながら愛の告白さながらの想いを激しくぶつけてくるシュウにアオイは慌てて首を横に振る。

「ううんっ……違うの! 
まだ調子が悪い私を先生は心配してくださって……家に帰らないなら保健室で休んでなさいって。それでここに連れてきてもらったの」

「ちょっとアオイ! 言われてみれば顔色悪いじゃん! 無理して学校来ることないんだよ? 今からでも帰ったほうがいいって!」

 シュウを押し退けて身を乗り出したミキ。医療の心得など皆無なはずの彼女はアオイの手首をとると脈を測りはじめた。

「それでなんかわかんのかよ、ミキ……」

 話の鼻を折られたシュウは、もっともらしく頷いている親友を疑いの眼差しで見やる。

「ふむ、ふむふむ……」

「ミキ先生、私なにかの病気ですか?」

 なにかの気に憑りつかれているとしても、それはきっと"眠気"のたぐいだとわかるが……それよりもミキが何と答えるかに興味のあるアオイはドキドキと期待に満ちた表情でミキの言葉を待つ。

「うーん……、……こ、これはっっっ!!」

「……これは?」

「……焦らすなって……」




「――反抗期――っ!!」



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