狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「……それでアオイ様は?」
「部屋で眠ってる。食事の前にお声掛けしてみるけどさ、なんか元気づけられる方法ねぇかな……」
眠ったままのアオイを彼女の私室に送り届けたカイはアレスのもとへやってきていた。
魔導師の彼は師であるガーラントの命により書庫で魔導書の整理に追われていたが、カイの話を聞くなり手を休めて腰を落ち着ける場を設けてくれた。
「おそらく自信の喪失が原因だと思うけど……その"ごめんね"が気になるね」
冷静な判断ができるアレスにアオイとの会話のすべてを話したカイ。謝罪の意味を聞く前にアオイが眠りに落ちてしまったため、その真意がわからずに戸惑いをみせていた。
「……そうなんだよな。なんか言えないことでもあんのかなって、勘ぐってみたけど思いつかねぇし……」
カイはアレスが積み上げた貴重な魔導書に顎を預けて突っ伏すと、素早く横から伸びてきた腕に支えを抜き取られてしまった。
バーン! と激しく顎を打ち付けたカイは恨めしそうにアレスを睨む。
「痛ってぇな! お前には優しさってもんはないのかよ!」
「君より貴重な魔導書だ。見ていたのがガーラント先生だったらカイは燃やされていたかもしれないよ?」
「げげっ!」
本気で蒼褪めるカイを余所にアレスは話題を戻す。
「まずは無理に聞き出そうとせず、打ち明けてくれるまで待つしかないよ。
それと……学問でお困りなら私たちが力になれるけど、悩みが他にあってそれがキュリオ様の御心に反することだったらお助け出来ないのはわかってるよね」
仕える姫君のこととなると危うく道を踏み外してしまいそうになる彼へ釘を刺すようにアレスがピシャリと言い放つ。
「……わ、わかってるって!」
座っていた椅子が引っ繰り返るくらいの音をたてて立ち上がった剣士は、姫君の様子を見てくると言い残しバタバタと書庫を飛び出した。そして一度遠ざかったと思った足音が再び扉の前を通過したところをみると、アレスの図星の指摘に動揺した彼が方角を間違ったことが伺える。
(……君の一番は今も変わらずアオイ様なんだろうね、カイ……)
王に仕える従者としてキュリオより上があってはならない。しかし、理性というものをとっくの昔に飛び越えて、王の娘に密かな恋心を抱いているカイが最も優先するのはやはりアオイだった。
任務に私情が絡めば判断を誤る可能性がある。結果、それが致命傷となり己の身を滅ぼすことに繋がるため、カイのような人間は適任じゃないかもしれない。
だが、慈しむべき王の娘が相手とあらば……滲み出る感情を偽ることなく表現できる人間味にあふれた彼のような人物が最適なのだろうとアレスは思い始めていた。
「いつだってアオイ様が欲するのは感情が込められたあたたかい言葉なんだ――」
「部屋で眠ってる。食事の前にお声掛けしてみるけどさ、なんか元気づけられる方法ねぇかな……」
眠ったままのアオイを彼女の私室に送り届けたカイはアレスのもとへやってきていた。
魔導師の彼は師であるガーラントの命により書庫で魔導書の整理に追われていたが、カイの話を聞くなり手を休めて腰を落ち着ける場を設けてくれた。
「おそらく自信の喪失が原因だと思うけど……その"ごめんね"が気になるね」
冷静な判断ができるアレスにアオイとの会話のすべてを話したカイ。謝罪の意味を聞く前にアオイが眠りに落ちてしまったため、その真意がわからずに戸惑いをみせていた。
「……そうなんだよな。なんか言えないことでもあんのかなって、勘ぐってみたけど思いつかねぇし……」
カイはアレスが積み上げた貴重な魔導書に顎を預けて突っ伏すと、素早く横から伸びてきた腕に支えを抜き取られてしまった。
バーン! と激しく顎を打ち付けたカイは恨めしそうにアレスを睨む。
「痛ってぇな! お前には優しさってもんはないのかよ!」
「君より貴重な魔導書だ。見ていたのがガーラント先生だったらカイは燃やされていたかもしれないよ?」
「げげっ!」
本気で蒼褪めるカイを余所にアレスは話題を戻す。
「まずは無理に聞き出そうとせず、打ち明けてくれるまで待つしかないよ。
それと……学問でお困りなら私たちが力になれるけど、悩みが他にあってそれがキュリオ様の御心に反することだったらお助け出来ないのはわかってるよね」
仕える姫君のこととなると危うく道を踏み外してしまいそうになる彼へ釘を刺すようにアレスがピシャリと言い放つ。
「……わ、わかってるって!」
座っていた椅子が引っ繰り返るくらいの音をたてて立ち上がった剣士は、姫君の様子を見てくると言い残しバタバタと書庫を飛び出した。そして一度遠ざかったと思った足音が再び扉の前を通過したところをみると、アレスの図星の指摘に動揺した彼が方角を間違ったことが伺える。
(……君の一番は今も変わらずアオイ様なんだろうね、カイ……)
王に仕える従者としてキュリオより上があってはならない。しかし、理性というものをとっくの昔に飛び越えて、王の娘に密かな恋心を抱いているカイが最も優先するのはやはりアオイだった。
任務に私情が絡めば判断を誤る可能性がある。結果、それが致命傷となり己の身を滅ぼすことに繋がるため、カイのような人間は適任じゃないかもしれない。
だが、慈しむべき王の娘が相手とあらば……滲み出る感情を偽ることなく表現できる人間味にあふれた彼のような人物が最適なのだろうとアレスは思い始めていた。
「いつだってアオイ様が欲するのは感情が込められたあたたかい言葉なんだ――」