狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
破壊行動による風圧で天蓋ベッドのカーテンが大きく揺れて、その隙間から見えた銀色の影にアオイは竦み上がった。
「……っ!」
窓から隙間から差し込んだ月の光が近づいてきた人物の姿を映し出し、ギラリと光った鋭い視線がアオイの体の自由を奪う。
「……っ!!」
「鍵を掛けているとはな……よほど私に会いたくないらしい」
「ぁ……、あのっ……」
見下すような冷えた眼差しに唇がどんどん感覚を失い、うまく言葉を紡ぐことができない。……いや、もはや言い訳など通用しない相手であることを重々承知しているアオイ。無理に抵抗しようものならば、さらなる強い力で抑えつけられてしまうことはすでにわかっている。
「来なさい。扉が壊れた部屋でお前を眠らせるわけにはいかない」
「は、はい……」
そう言った彼は行く先を目配せすると、有無を言わせぬ気迫でついて来るようアオイに指示する。
拒絶することも出来ず後をついて行くと、自室の扉が無残にも破壊され倒れている様子が目に飛び込んできた。
最初の異音……それは部屋への侵入を許すまいとする錠の懸命な抵抗だった。しかし、その後の破壊音は……とある人物の尋常ではない力にひれ伏してしまった蝶番や錠の千切れ飛ぶ音と、支えを失った扉が大きな力によって倒されたものだったとわかる。
まるで戦いのあとの惨劇を目にしたかのような衝撃に足を竦ませていると、突然浮き上がる感覚に口の端から小さな悲鳴が零れ落ちる。
「きゃっ」
「…………」
恐らく金属片や木片で怪我をしないよう抱き上げられたものだと思うが、口を開かないキュリオにこれまで以上の不安が胸を覆い尽くす。
やがてひとつの扉へと入り、暗がりの中をさらに歩いていくとアオイのベッドよりも大きなそれが目の前に現れ、その上におろされた。
――パサッ……
彼の手により天蓋ベッドの帳が下ろされ、さらなる闇がアオイの視界を奪う。
「……」
(なにも見えない……)
すぐ傍からベッドの軋む音がするものの、目が慣れるまで下手に動くことはできない。どうしようかと座ったままの姿勢を続けていると――……
「すこし話をしようか」
言われて背後を振り返る。
「……はい」
頬杖をついたキュリオはひとかけらの笑みもなく定位置で横になっていた。
「…………」
(もう一度だけお話してみて、それでもわかっていただけなかったら部屋に戻ろう……)
今回ばかりは自身を貫き通したいと心に決めたアオイはキュリオの前に正座すると頭を下げる。
「……お父様、私の気持ちは変わりません。どうかお許し……」
最後までアオイが言い終える前に、頭上から降り注いだ声がそれを遮った。
「これから先、お前が自由にできるのはこの空間だけだと言ったらどうする?」
「……っ!」
窓から隙間から差し込んだ月の光が近づいてきた人物の姿を映し出し、ギラリと光った鋭い視線がアオイの体の自由を奪う。
「……っ!!」
「鍵を掛けているとはな……よほど私に会いたくないらしい」
「ぁ……、あのっ……」
見下すような冷えた眼差しに唇がどんどん感覚を失い、うまく言葉を紡ぐことができない。……いや、もはや言い訳など通用しない相手であることを重々承知しているアオイ。無理に抵抗しようものならば、さらなる強い力で抑えつけられてしまうことはすでにわかっている。
「来なさい。扉が壊れた部屋でお前を眠らせるわけにはいかない」
「は、はい……」
そう言った彼は行く先を目配せすると、有無を言わせぬ気迫でついて来るようアオイに指示する。
拒絶することも出来ず後をついて行くと、自室の扉が無残にも破壊され倒れている様子が目に飛び込んできた。
最初の異音……それは部屋への侵入を許すまいとする錠の懸命な抵抗だった。しかし、その後の破壊音は……とある人物の尋常ではない力にひれ伏してしまった蝶番や錠の千切れ飛ぶ音と、支えを失った扉が大きな力によって倒されたものだったとわかる。
まるで戦いのあとの惨劇を目にしたかのような衝撃に足を竦ませていると、突然浮き上がる感覚に口の端から小さな悲鳴が零れ落ちる。
「きゃっ」
「…………」
恐らく金属片や木片で怪我をしないよう抱き上げられたものだと思うが、口を開かないキュリオにこれまで以上の不安が胸を覆い尽くす。
やがてひとつの扉へと入り、暗がりの中をさらに歩いていくとアオイのベッドよりも大きなそれが目の前に現れ、その上におろされた。
――パサッ……
彼の手により天蓋ベッドの帳が下ろされ、さらなる闇がアオイの視界を奪う。
「……」
(なにも見えない……)
すぐ傍からベッドの軋む音がするものの、目が慣れるまで下手に動くことはできない。どうしようかと座ったままの姿勢を続けていると――……
「すこし話をしようか」
言われて背後を振り返る。
「……はい」
頬杖をついたキュリオはひとかけらの笑みもなく定位置で横になっていた。
「…………」
(もう一度だけお話してみて、それでもわかっていただけなかったら部屋に戻ろう……)
今回ばかりは自身を貫き通したいと心に決めたアオイはキュリオの前に正座すると頭を下げる。
「……お父様、私の気持ちは変わりません。どうかお許し……」
最後までアオイが言い終える前に、頭上から降り注いだ声がそれを遮った。
「これから先、お前が自由にできるのはこの空間だけだと言ったらどうする?」