狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~

ツライ現実

(俺…って?…さっきの人だ……)



「…だめかな?」



「…っ!」



ふいに顔を近づけられ、互いの前髪が触れ合ってしまいそうなほどに距離が縮まると顔を赤く染めたアオイは慌てて一歩下がった。



「だ、だめじゃない…ですっ!あっ…これどうぞっ!!」



アオイは両手に抱えた赤い玉のいくつかをスカーレットに手渡すと、赤くなった頬を見られぬよう機敏な動きを見せ始めた。



「はいっ!それっ!!えいっっっ!!!」



「な、なんで入らないのっっっ!!」



アオイの投げた玉は高さがちぐはぐだったり、手前に投げてみたり、籠を越えてみたりと不安定な軌道を描きつづける。 
そして早くも肩で荒い呼吸を繰り返すアオイの傍から爽やかな笑い声が聞こえてきた。



「ははっ!お前って玉入れのセンスないな」



「わ、私だって何度か繰り返せばきっと…っ…!!」


(よし、こうなったら…っ!)



数を打てば入ると考えたアオイは手当たり次第の玉を投げつける。



「あっ!おしいっ!!」



ようやくひとつの玉が籠をかすめるが、見事に落下していく寂しげなその姿をアオイはため息とともに見送った。



「はぁ…」

(私って本当に何も出来ない…腕も痛いし……)



普段あまり腕を上げる動作をしないアオイは痛みだしたその部分を情けない気持ちで見つめている。



「…そう落ち込むなって、よく見てろよ?」



「…?」



一歩前に踏みだし、軽く腕を振った彼女の玉は綺麗な放物線を描きながら迷うことなく籠に吸い込まれていく。

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