狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
耳を疑う言葉
"キュリオ様…"
"…今からこんな話をしていても仕方がないとわかっているつもりさ。しかし…子供の成長は早い。いつか私以外の誰かの手を取る日が来るなど…考えたくないものだな…"
小さな体を抱き上げたキュリオは頬をすり寄せてくる幼子のぬくもりに微笑むと、来た道をゆっくりと歩き出した。
すると彼は一度立ち止まり、呟いた言葉が風に乗ってブラストのもとへ届けられる。
"…私が父と呼ばれることに苦痛を感じる日もそう遠くはなさそうだ…"
その時、聞き間違いかと耳を疑ったブラストだったが…
(あの時のキュリオ様のお言葉は聞き間違いなんかじゃない…アオイ様を取り巻く環境が大きく変化した今、キュリオ様の心の箍(たが)が外れるのも時間の問題だ…)
最近の銀髪の王の言動や行動を見て確信を得たブラストは内心焦りを感じながらも、自分で考え、日々己の世界を広げていく幼い姫を頼もしく思うのも事実だった。
「いずれにせよ…お決めになるのは姫様か…」
アオイが通ったであろう中庭の小道を急ぐと、ようやく美しい髪を振り乱しながら前方を駆ける彼女の姿を視界に捉えることが出来た。
「……」
ブラストは呼吸を整えながらアオイに気づかれぬよう一定の距離をあけながら後をつける。