手を伸ばしたその先に

人生一の不幸の中で

「若い内の苦労は買ってでもしろ。」っていう言葉がある。「買ってでもしろ。」なんて言うが、「苦労」ってやつは24時間年中無休で大安売りしてある。それどころか、お金を払わずともいつでも勝手にやって来てくれる。
反対に「幸せ」ってやつは中々手に入れることができない。それどころか、手に入れたと思ってもよく無くなってしまう。たぶんこいつはいくら大金を積み上げてもそう簡単には手に入れられないだろう。もし、「幸せ」がお金を出して買えるならば、金輪際漫画もゲームも我慢するからなるべく沢山くれと今の私なら泣きながら懇願するに違いない。

「3週間か…」
私は、盛大にため息をついて気だるげにスマホをサイドテーブルに置いた。真っ白で清潔感がありすぎる天井と壁に囲まれた部屋。壁に貼ってあるポスターに書かれている、人をバカにしたような笑みを浮かべた猫。惨めな自分の姿を笑われているように思えて、悔しくて鼻の奥がツンとした。
「ばーか。」
呟いた言葉は、誰に聞かれることもなく、無情に消えていった。今回私が買った「苦労」はどうやら返却出来ないようだ。若い内は、こんな「苦労」まで買わなければならないのだろうか。今私は人生で一番の不幸を味わっていると言っても過言ではないだろう。
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