アバターの恋
由香はタクシーの中で暫く泣いて、涙が渇れたのか外を見ている。

涙は、目の保護のためにあるのだが、どんな薬より精神に効く。鬱積したストレスを総て涙と一緒に流してくれる。涙の量だけ人は強くなるのだ。
由香は、自分の力で傷ついた心を治癒している。

「由香ちゃん、買い物はいつもどこにゆくの?」

磯山は話を変えた。

由香はニコッとして磯山の方を向いた。

「渋谷の西武の裏にブルブルって可愛い服を置いてる店があるの、お母さんといつも一緒に行ってた」

由香は話ながら母を思い出したが、今度は唇を固く結び、涙を見せなかった。

由香の生活は母がほとんど占めていた。買い物、料理、友達、磯山すら母の知り合いだ。切り離すと生活は出来ない。
由香は母がいない寂しさと必死に戦って勝つしかない。
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