傷つけたくない 抱きしめたい
最近、雪夜くんが少しおかしい。

どこが、とは言えないけれど、なんとなく、前よりもぼんやりしていることが多いのだ。


いつから、と考えると、あの遠足の日、嵐くんに激しい口調で詰め寄っていたのを私が見てしまったときからの気がする。

嵐くんと何かあったのかな、と思っていたけれど、あのあと、二人はいつも通りに戻った。

嵐くんがにこやかに話しかけて、雪夜くんは気の無さそうな返事をする、といういつもの関係。


だから、すっかり仲直りしたものと思っていたのだけれど、もしかしたらまだわだかまりが残っているのかもしれない。



黒板の方に目を戻すと、テーマ決めの話し合いはすでに決着がついて、準備の役割分担も決めることになったようだった。


「じゃあ、だいたいの目安としては、不思議探しグループが四人七班で、展示とか飾り付けのグループが四人三班な。適当にグループ組んでみて、過不足があったらそれはそれで良しってことで」


嵐くんはてきぱきと進行し、クラスのみんなもスムーズにグループ決めをして、時間内には役割分担を決めることができた。


私は梨花ちゃん、嵐くん、雪夜くんと四人で、不思議探しをすることになった。



「じゃあ、期末テストが終わったら、本格的に調べ学習で動き出そっか。それまでに、どんな不思議を調べるか、目星はつけとかないとね」


放課後、四人で残って話していると、梨花ちゃんがわくわくした様子でそう言った。


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