傷つけたくない 抱きしめたい
「すげえ、立派な十字架。見てみろよ」
と感嘆する嵐くんの声が聞こえてきたので、私と梨花ちゃんは雪夜くんの背中を追った。
時々、崩れた屋根の破片を踏んで、足の裏がぱきりと鳴る。
「教会の十字架って、こんなに大きいんだね」
梨花ちゃんが感心したように言う。
台の上に立てられた十字架は、この中でいちばん背が高い雪夜くんの頭ひとつ上あたりまでの高さがあった。
十字架の後ろにあるステンドグラスの窓から射し込む陽光を受けて、赤や青や緑に輝いている。
きれい、と私は心のなかでため息をもらした。
なんて美しいんだろう。
なぜだか目頭が熱くなって、視界がじんわりと滲んだ。
「しかも、この十字架だけ、ほとんど傷んでないね」
と言いながら、梨花ちゃんが手で埃を払う。
嵐くんが鞄の中からタオルを出して、「代わるよ」と十字架の表面を軽く拭きはじめた。
みるみるうちにもとの色が現れる。
それは、澄んだ光を放つ銀色の十字架だった。
「……やっぱり、きれい」
無意識に呟いた。
呟いてから、あれ、と心の中で首を傾げる。
やっぱり、というのは、どうしてだろう。
なんで私は、やっぱり、などと思ったのだろう。
でも、次の瞬間には梨花ちゃんに話しかけられ、些細な引っかかりはすぐに私の頭から消え失せた。
と感嘆する嵐くんの声が聞こえてきたので、私と梨花ちゃんは雪夜くんの背中を追った。
時々、崩れた屋根の破片を踏んで、足の裏がぱきりと鳴る。
「教会の十字架って、こんなに大きいんだね」
梨花ちゃんが感心したように言う。
台の上に立てられた十字架は、この中でいちばん背が高い雪夜くんの頭ひとつ上あたりまでの高さがあった。
十字架の後ろにあるステンドグラスの窓から射し込む陽光を受けて、赤や青や緑に輝いている。
きれい、と私は心のなかでため息をもらした。
なんて美しいんだろう。
なぜだか目頭が熱くなって、視界がじんわりと滲んだ。
「しかも、この十字架だけ、ほとんど傷んでないね」
と言いながら、梨花ちゃんが手で埃を払う。
嵐くんが鞄の中からタオルを出して、「代わるよ」と十字架の表面を軽く拭きはじめた。
みるみるうちにもとの色が現れる。
それは、澄んだ光を放つ銀色の十字架だった。
「……やっぱり、きれい」
無意識に呟いた。
呟いてから、あれ、と心の中で首を傾げる。
やっぱり、というのは、どうしてだろう。
なんで私は、やっぱり、などと思ったのだろう。
でも、次の瞬間には梨花ちゃんに話しかけられ、些細な引っかかりはすぐに私の頭から消え失せた。